顔面感覚の異常・痛み
顔面の感覚は、三叉神経という神経を介して脳に伝えられます。三叉神経は左右1対あり、それぞれが頭蓋内から出たところで3つに分かれます。1つ目の枝(第一枝)はおでこから前頭部にかけて、2つ目の枝(第二枝)は鼻・上唇から頬、こめかみにかけて、3つ目の枝(第三枝)は下あごから耳のあたりにかけての感覚に携わります。皮膚に生じた刺激を脳に伝える求心性の線維です。
顔面の異常感覚は、顔面の皮膚その他で生じた刺激が、この三叉神経を介して脳に伝わることで発生します。感覚の障害には、感覚低下、感覚脱失、感覚過敏(疼痛を含む)、感覚の変容(違和感)に分けられますが、三叉神経の異常としては疼痛、すなわち三叉神経痛が最も有名です。三叉神経痛の症状は、主に頬のあたりの短時間の電撃痛です。歯科の病気と間違えられることも少なくありません。三叉神経痛については病名から検索の項目に別記していますのでご参照ください。
顔面の痛みの原因
いわゆる「三叉神経痛」以外の顔面の痛みの原因としては、三叉神経領域の腫瘍(小脳橋角部腫瘍)や炎症、また副鼻腔炎(蓄膿症)、顎関節由来の痛み、側頭動脈炎、耳介側頭神経の神経痛なども挙げられます。
非定型顔面痛(持続性特発性顔面痛)
顔面の「うずくような」痛みがあるけれども、MRIその他の検査で上記のような異常が全く見つからない場合には、非定型顔面痛という診断を受けるかもしれません。このような患者さんは脳の画像診断でも原因は特定できず、しばしば痛みの緩和を求めて耳鼻科、眼科、歯科などといった複数の診療科を転々とします。
非定型顔面痛は、メンタル面に問題を抱えている方に起こりやすい傾向があります。抑うつ傾向、うつ病、心気神経症、ヒステリー傾向、自律神経失調症なども含まれます。特別な病気が見つからないので病院では相手にされず、本人が途方に暮れることになりかねません。
テグレトールが有効なこともありますが、その他抗うつ剤や漢方薬を試みてみるのもよいかもしれません。それでも痛みのコントロールがうまくいかない場合には、心療内科や精神科の先生と連携しつつ診ていくのが望ましいかもしれません。
顔面の感覚低下
一方、痛みと比べると頻度は低下しますが、感覚の低下も生じます。感覚の低下は三叉神経そのものの異常でも生じますが、それよりも脳に起因することの方が多いと思われます。脳の中でも、大脳よりも特に脳幹の病変が疑われます。原因となりうる脳病変として、脳梗塞や小さな脳出血などの血管障害、変性疾患、多発性硬化症、脳腫瘍などが挙げられます。
診断について
顔面の感覚異常を訴える患者さんは、頻度的に多くはないですけれども、もし気になる症状があればMRIを受けてみることをお勧めします。なお、治療は原因となる疾患により、内科的治療から外科治療に至るまで大幅に異なりますので、ここでは省略します。