脳波検査とは
脳波検査とは
ヒトの脳波、140億個もの神経細胞の集合体とされています。脳細胞の活動は、極めて微小な電気が細胞内、そして細胞間を流れることで成り立っています。
脳細胞から発生したこの微弱な電位を、頭皮の上に設置した電極を用いて検出し、それを脳波計の内部で数万倍~100万倍に増幅したものが脳波になります。
生体が発生した電流を感知するという意味で、脳波は心電図と類似の検査であると言えます。心電図や脳波などを、生理機能検査と呼びます。
CTやMRIが臓器の形態をみる検査であるのに対しいて、脳波は脳の機能や活動を調べる検査になります。
脳波の起源
脳波の起源としては、大脳の皮質に存在する大錐体細胞に生じるシナプス後電位とされています。多数の錐体細胞が同時に活動して生じる電位(興奮性シナプス後電位:EPSP)と抑制性シナプス後電位:IPSP)が、最も有力な脳波の起源と考えられています。
脳波は、大脳皮質で発生した電位が脳脊髄液の中を拡散し、頭蓋骨内で減衰し、皮下組織を経由して皮膚で記録されたものなので、広がりを持った弱い電流になってしまいます。
3つの脳波検査
脳波検査には大きく3つの方法があります。
ルーチン脳波、頭皮上脳波
一つ目は、スタンダードな方法で、脳波室で頭皮に電極を付けて30分間程度記録する方法です。頭皮の上に電極を付ける方法であり、「頭皮上脳波」、「ルーチン脳波」などとも呼ばれます。
長時間ビデオ脳波モニタリング
二つ目は、病室で脳波計を付けっ放しにして、病棟で24時間~数日間過ごし、その間ビデオで状態を記録する方法です。これを「ビデオ脳波モニタリング」と呼び、てんかん重積状態の患者さんや難治性てんかんの診断が必要な患者さんに対して用います。これも、頭皮上脳波の一種です。
頭蓋内電極記録
三つ目は、主に難治性てんかんの手術の一環として用いる方法で、開頭手術などにより頭蓋内の脳表に直接電極を置いて、脳波を記録する特殊な方法です。「頭蓋内電極」と呼ばれ、
2種類の電極
「硬膜下電極」:開頭手術により、脳の表面に敷く電極
「深部電極」:頭蓋骨の小さな穴、もしくは脳表から脳の深部に向かって挿入する細い電極
2種類の記録方法
「術中皮質電位記録」:手術中に行う脳波記録で、脳表に電極を置いて検査する
「慢性硬膜下電極記録」:手術にて頭蓋内に挿入した電極を用いて、術後に脳波検査(ビデオ脳波モニタリング)を行う
(頭皮上)脳波の記録方法
脳波は通常、頭皮につけられた皿電極で記録します。皿電極の付け方には様々な方法がありますが、スタンダードな方法は、ペーストというものを塗ってその上に電極を置きます。
理論上、脳波を記録するためには最低3つの電極が必要です。一つは、記録のための電極、もう一つは電位差を図る基準となるための電極、そしてアース(接地)と呼ばれるものです。
通常、国際10-20法という方法に基づいて、前頭部から後頭部に至る頭部に等間隔で19個の電極を貼り、これに両側の耳朶に付けた2つの電極と合わせて21個の電極で記録します。病院によっては、これに加え顔面やその他の部位に電極を貼るかもしれません。
脳波の波形を表示するためには、アースに加えて基準電極を決める必要があります。この基準電極と各電極との電位差が、脳波として表示されます。基準電極の決め方には大きく2つの方法があります。
単極誘導 : 全ての電極から選んだ特定の電極を基準電極とする方法
双極誘導 : 近接した2点のうちの1方を基準電極とする方法
単極誘導の基準として用いられることが多いのが、両側の耳朶につけた電極です。その他、頭部の中央にある電極が用いられたり、全電極の平均値を基準にしたりする(アベレージ・リファレンス)こともあります。
正常の脳波
正常成人の脳波では、閉眼時に後頭部優位の左右対称なα波(アルファ波)が出ます。これは、8~13Hz(つまり1秒間に8~13回繰り返す)の波形のことです。正常成人の後頭部を中心としたα波のように、その人の安静閉眼時の脳波において最も優勢な波形を優位律動と呼びます。これがリラックスしているときに出る脳波だと言えます。
α波の振幅やその変化や分布、左右差などに異常がないかを見極めます。
α波は、開眼すると減少します。また、意識障害のある人ではα波が見られず、より遅い周波数の波や、逆に速い周波数の波が見られたりすることもあります。
α波(アルファ波): 8-13Hz
β波(ベータ波): 14-29Hz
θ波(シータ波): 4-7Hz
δ波(デルタ波): 1-3Hz
γ波(ガンマ波): 30-79Hz
※ Ripple: 80-200Hz
※ Fast ripple: >200Hz
通常の脳波検査で見ることができるのは、α~δ波までです。