一次性穿刺様頭痛
一次性穿刺様頭痛とは
国際頭痛分類 4.7
一次性穿刺様頭痛は、突然、針で刺されたような非常に短時間(通常は3秒未満)の痛みが、頭部に反復して起こる頭痛です。
「アイスピック頭痛」、「ジャブ・ジョルト」、「周期性眼痛症」などと呼ばれていたこともあります。
この頭痛は、MRIやCTといった画像検査で器質的な異常が見られない一次性頭痛に分類されます。
女性にやや多い傾向があり、特に片頭痛や群発頭痛の既往をもつ方に合併しやすいことが報告されています。
診断は?
突然発症し、数秒以内に消失する非常に短い刺すような痛み。
多くは数回〜数十回/日程度の頻度で繰り返される。
痛みは頭部のどの部位にも出現しうるとされます。以前は前頭部(三叉神経第1枝領域)が多いとされていましたが、現在は特定の部位に限らないとされています。
片頭痛患者の約30〜40%が一次性穿刺様頭痛と類似の症状を経験するとされ、片頭痛の発症部位と一致することが多い。
間違えやすい頭痛には、三叉神経痛や、結膜充血および流涙を伴う短時間持続性片側神経痛様頭痛(SUNCT)があります。一次性穿刺様頭痛では、結膜の充血や涙が出やすいことはありません。
鑑別診断(除外すべき疾患)
一次性穿刺様頭痛に似た症状を呈する疾患には以下があります:
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三叉神経痛:電撃様の痛みで、トリガーゾーンにより誘発されやすい
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SUNCT/SUNA:短時間の刺すような痛み+流涙・結膜充血などの自律症状を伴う
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大後頭神経痛:後頭部の限局痛+圧痛を伴う
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帯状疱疹ウイルス感染後神経痛(PHN)
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脳腫瘍(髄膜腫、下垂体腺腫など)
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巨細胞性動脈炎
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その他の器質的疾患(血管奇形、静脈洞血栓など)
▶ 新たにこのような痛みが出現した場合は、MRI/CTで二次性頭痛の除外が必要です。
考えられる病態・メカニズム
Kwonら(2023年、Cephalalgia)は、一次性穿刺様頭痛の機序として以下のような説を紹介しています:
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末梢神経の自発放電
三叉神経や後頭神経のAδ線維終末の過敏性が、短時間の刺す痛みを引き起こす -
Schwann細胞やグリア細胞の機能障害
神経支持細胞の異常が感覚入力の過敏性に関与 -
三叉神経—頸神経複合体での中枢性感作
反復する入力刺激により痛覚制御が過剰に働く可能性 -
片頭痛との関連性
片頭痛との合併の高さから、片頭痛と共通の中枢機序がある可能性が示唆されています
治療は?
多くの症例では自然軽快しますが、発作頻度が高く生活に支障がある場合は薬物療法を考慮します。
・第一選択:
インドメタシン(1日75〜150mg)
→ 有効例が多いが、副作用に注意
・その他有用な薬剤(報告ベース):
- COX-2阻害薬(セレコキシブ など)
- ガバペンチン
- メラトニン(3〜9mg)
- プレガバリン、トピラマート、カルバマゼピンなど
- ボツリヌス毒素注射(難治例に対して)
※多くの薬剤は「一次性穿刺様頭痛」に対して保険適応外です。
多くの方では自然治癒が得られます。
最終編集日:2025年7月13日