副鼻腔炎による頭痛
前頭部の痛みの場合、痛みの原因が脳にあるとは限りません。
特に、前頭部の頭痛の場合には要注意です。
副鼻腔炎(蓄膿症)は鼻の奥の空洞にバイ菌が入り炎症を起こした状態です。
頭痛の患者さんで、おでこの奥の痛みが強い時には、副鼻腔炎(蓄膿症)かもしれません。
バイ菌が鼻から副鼻腔に侵入し、炎症を起こすと、本来は空洞であるはずの副鼻腔に膿が溜まります。
副鼻腔炎の患者さんは、鼻詰まりが主な症状であれば耳鼻科に行くと思います。
しかし、「鼻詰まりは以前から感じているけど、最近頭痛が気になりだした」という場合には脳神経外科に行くかもしれません。
正しい診断を受けることができないと、「あなたは何も異常がありませんね。」とか、「片頭痛でしょう」、「肩こりが原因でしょう」、「ストレスもたまっているでしょう」などと言われて帰される、もしくは鎮痛薬を処方されるかもしれません。
副鼻腔炎の診断はそれほど難しいものではありません。MRIやCT検査を行うと、疼痛の部位に一致した液貯留を認めます。
副鼻腔炎による頭痛にはそれなりの特徴があります。
蓄膿症の頭痛の特徴
鼻腔の周囲には副鼻腔という空洞があります。副鼻腔に膿が溜まると頭や顔、歯に痛みが発生してくることがあります。
副鼻腔は、眉間の骨が出た部分の裏側や、頬の裏側などにあります。つまり、鼻を取り囲むように複数に分かれて存在しています。それぞれ前頭洞(ぜんとうどう)、上顎洞(じょうがくどう)、篩骨洞(しこつどう)、蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)などと名前がついています。
しばしば副鼻腔のどこか一部分に膿が沢山たまります。重症の場合にはいろいろなところに膿がたまります。
前頭洞(眉間の裏)に膿がたまった場合には、前額部の痛みが生じます。
両方の眼球の間にある、篩骨洞に膿がたまった場合には、目の奥あたりに痛みが生じます。
更にその奥の、蝶形骨洞に膿がたまった場に合は、頭の奥の痛みが生じます。
頭が重い(頭重感)
蓄膿症の場合、頭痛のほかに頭が重たい感じ(頭重感)伴うことが多くあります。頭を下に向けた時に痛みが強くなります。
膿がたまっているところの副鼻腔を押したり、叩いたりしてみると痛みを感じられるかもしれません。例えば、前頭洞に膿がたまっている場合には眉間の、上顎洞に膿がたまっている場合には頬の痛みを感じます。
上記のような症状がある方で、鼻水や鼻づまりがあれば蓄膿症の疑いが濃厚です。
その他、急性期や重症の副鼻腔炎の方は、発熱を伴います。脳神経外科に来るときに熱があることは多くありませんが、要注意です。
蓄膿症の症状
- 鼻水、鼻づまり
- 頭痛、頭重感
- 副鼻腔の圧痛、鈍痛
- 発熱
一方、自分では鼻づまりの自覚がなくても、頭痛(もしくは顔面痛)で病院を受診して初めてわかる、というケースは多いものです。
脳神経外科医が蓄膿症を見分ける
耳鼻科医の先生方は蓄膿症を見るとき、鼻鏡を使われると思います(必要に応じてX線検査やCT検査を行います)。
脳神経外科医は鼻鏡の扱い方になれていません。そもそも鼻鏡を持っていません。
脳神経外科医は頭痛で初診の患者さんに対してCTやMRI検査を行います。
副鼻腔は通常、空気で満たされていて、CTやMRIでは内部が真っ黒に移ります。しかし膿がたまっていると、CT/MRI上ではその副鼻腔が灰色の液体で満たされているように見えます。
液が充満している部位と痛みの強い部位が一致していたら蓄膿症の疑いが濃厚です。
副鼻腔炎(蓄膿症)による頭痛の緩和方法
鎮痛薬を飲むことで痛みを抑えます。
ただし、鎮痛剤は症状を緩和させますが、原因の除去にはなりません。
蓄膿症の原因となっている気道の炎症を解消するためには、薬を用います。
一つには、抗生物質です。鼻腔や副鼻腔で繁殖している細菌を殺す目的で使用します。鼻の中で繁殖しているある特定の菌を効果的に殺すためには、どの抗生物質でもいいわけではありません。副作用の面からも、気軽に使えるものではありませんので、医師に相談しましょう。
その他、鼻水や痰を改善する薬を使います。
また、アレルギーが関与している場合にはアレルギーを抑える薬を用いることもあります。
耳鼻科では、吸入や鼻洗浄により膿を出しやすくする処置を行うかもしれません。
重症例ではステロイドを用いたり、場合によっては内視鏡を用いた手術を行うこともあります。
発症を予防するには
再発予防には、室内の空気をきれいにすること、うがいなどを行い、気道を清めることです。
蓄膿症は、鼻の粘膜の炎症が続くことで膿がたまった状態です。鼻腔の慢性的な炎症を解消するために、原因の除去に努めましょう。