外傷性くも膜下出血
外傷性くも膜下出血とは
外傷性くも膜下出血は、外傷を契機として生じたくも膜下出血のことです。
くも膜下出血とは名がついていますが、通常よく耳にするくも膜下出血とは原因もその後の経過も大きく異なります。共通していることは、「くも膜」と呼ばれるともに脳を覆っている薄い膜の下(脳表;正確には軟膜の上)に出血しているということです。
原因は?
原因は、脳表の血管からの出血です。
ただ、脳血管の検査をしても血管の異常は見つからないため、出血した部位を確認できることは稀なケースのみです。
手術になるケースは少なく、また仮に手術になっても出血源の血管ははっきりとわからないことが殆どだと思われます。この点が、疾病である通常のクモ膜下出血(脳動脈瘤の破裂)とは異なるところです。
動脈瘤破裂によるくも膜下出血より出血量が少ないことが多いですが、出血量の多いケースでは動脈瘤破裂同様に脳血管攣縮を起こしえます。
症状は?
外傷性くも膜下出血は、出血量の少ないケースでは取り立てて症状はありません。むしろ、随伴する他の外傷による症状の方が目立つかもしれません。
出血量が増えると頭痛を伴ってもおかしくありませんが、頭痛の原因がくも膜下出血によるものかその他の頭部外傷によるものかは判別困難であると思います。
また、くも膜下出血の出血量によっては脳血管攣縮を起こし、時に症候性になります。脳血管攣縮とは、出血した血液が血管の外壁にくっついて血管壁に影響を及ぼし、血管が異常に収縮する現象をいいます。脳血管が異常に収縮するので、脳血流が悪くなります。症状は、攣縮した血管の灌流領域によって異なります。麻痺だったり、失語だったり、意識障害であることもあります。
検査と診断
他の外傷後の出血と同様で、診断にはCTが有用です。
外傷性くも膜下出血における血腫の分布は、脳動脈瘤破裂とは異なり限局性に見られることが多いですが、CTにおける血腫の分布のみから完全に区別することは容易でないこともあります。そこで、事故の状況や脳血管の検査所見などから総合的に判断します。状況次第では、造影剤を使用したCT脳血管撮影まで行ったほうがいいかもしれません。
また、稀ながら外傷後に脳血管に仮性動脈瘤を生じることもあり、くも膜下出血の原因となりえます。稀だからこそ発見が後手に回りがちであり、常日頃から注意しておくしかありません。
治療は?
通常、くも膜下出血自体は軽度のことが殆どで、通常の外傷の治療に準じて他の併存する障害に対する治療を行います。
症候性の脳血管攣縮を起こした症例では、脳血管攣縮に対する治療を行います。