肘部管症候群
肘部管症候群とは?
尺骨神経は小指側の感覚や、手指・手首の運動に関わる神経で、腕の内側を走行します。
尺骨神経が肘のところで圧迫を受け、小指と薬指がしびれる病気です。
中年以降の男性に多い病気です(男女比7:3)。ほとんどの場合、片側に起こります。
加齢に伴う肘の変形、肘を使うスポーツなどが原因となりますが、時にガングリオンという腫瘤が原因となります。
症状は?
小指と、薬指の小指側の半分にしびれを感じます。
また、小指外転筋、手の骨間筋、母指内転筋の麻痺により、薬指と小指が曲がり(屈曲)にくくなり、指と指ををくっ付けたり離したり(内転・外転)しにくくなり、親指を内側に曲げ(内転)にくくなります。手の細かい作業が上手にできなくなり、これらの筋肉の萎縮が起こります。手首の関節を曲げることがしにくくなります。
手の筋肉の萎縮が進行すると、手の骨が浮き出てみえるようになります。
診断方法は?
上記の症状の有無、手の筋委縮の有無を確認します。
〇 elbow flexion test:肘関節を最大屈曲位・手関節背屈位に保つと症状が悪化する。
〇 Tinel’s sign:肘の尺骨神経が通る肘部管を叩くと小指と薬指にしびれが生じる。
〇 Froment徴候:両手の親指と人差し指で紙をつまみ、反対方向に引っ張ると、親指の第1関節が曲がる。
確定診断には、尺骨神経の伝導速度検査(尺骨神経に皮膚の上から電流刺激を加えて、筋肉の反応を見る検査)を行います。
その他、X線検査、MRIや超音波エコーを行うこともあります。
同じ尺骨神経の障害である、Guyon管症候群と間違えないようにします。肘部管症候群では手背の小指側の感覚障害がありますが、Guyon管症候群ではこの部位の感覚は保たれます。
頚椎の病気との区別が問題となることもあります。頚椎の病気では前腕にも感覚障害を伴い、指を伸ばす筋肉が障害されます。また頸部を後屈するJacksonテストや頸部を患側へ側屈後屈させるSpurlingテストで手のしびれが誘発されます。頚椎MRIも参考にします。
治療は?
まずは、不快なしびれをきたすような肘の位置を取らないように矯正することです。肘をつく癖がある場合には、これを避けるようにします。夜間にはsplint装着、肘パット装着といった方法もあります。
薬としては、消炎鎮痛剤やビタミン剤などを用います。
肘部管内のブロックも用いられます。
筋委縮と鷲手変形を伴う方では手術を行います。