脳波からわかること | 福岡の脳神経外科 - はしぐち脳神経クリニック

脳波からわかること

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脳波からわかること

① 年齢的な変化

 

脳波は、こどもの成長に応じて年齢ごとに、そして高齢者の加齢に伴い、変化していきます。

その変化、脳波所見が年齢相応かどうかを判定することができます。

なお、20-65歳まではあまり変化しません。

 

② 睡眠リズム・睡眠障害

 

脳波の波形は、活動時、安静時、安静閉眼時、そして睡眠の各段階により異なります。

睡眠段階は、5段階に分けられます。うとうと状態から深い眠りまでを1~4期に分け、それにREM睡眠期が加わります。

入眠直後には深睡眠の時間が多く、明け方になるほど深睡眠は減少していきます。

年齢としては、高齢者になるほど深睡眠の割合が減少します。

睡眠障害のある方でも、深睡眠の割合が減少し、睡眠の質が良くないことが分かります。

※ 睡眠第3期と4期との区別は脳波上の問題だけと考え、両者を一緒にして徐波睡眠、深睡眠、睡眠段階3/4などと呼ぶこともあります。

 

③ 意識障害の評価

 

脳波は、意識障害の程度の客観的評価に有用です。 意識は、脳幹にある網様体賦活系と大脳との相互作用により保たれています。

意識障害があると、脳幹網様体賦活系と大脳との相互作用が低下してしまいます。すると、α波が減少してより周波数の遅いθ波が目立つようになります。意識障害が進行するとδ波やその他の異常脳波が増えて、最終的には平たん化してしまいます。

意識障害時の脳波波形は、意識障害の原因や脳の障害部位によって異なります。高度の肝機能障害では、三相波と呼ばれる波が出ます。ヘルペス脳炎やクロイツフェルト・ヤコブ病では、周期性同期性放電(periodic synchronized discharge; PSD)が特徴的とされます。高度の意識障害や麻酔による深い鎮静状態では、平たん波と突発波が交互に出現するsuppression burstという状態が見られます。薬物中毒では、広範囲のα波や、逆に速波が見られたりします。

 

④ 局所性脳障害の有無

 

脳波で、一部の電極にのみ限局した徐波を認めたならば、それは限局性の機能低下を指し示します。

例えば、脳の一部に脳腫瘍があれば、その近傍の電極に持続性、断続性に周波数の遅い波が出現します。

一方、脳幹や視床などといった脳の深いところの病変では脳の深部と大脳皮質との連携に支障が生じて、左右対称な一定の部位に間欠性の徐波を認めたりします。

こうした所見は、画像診断ができないときには病変部位推定の補助となり、画像診断ができる場合には画像診断との整合性を確認する目的で用いられます。

 

⑤ てんかん波形の有無

 

てんかんでは、脳波は必須の検査になります。脳波検査を行わずにてんかんの診断は成り立ちません。

てんかん患者さんでは、発作中にはてんかん性の異常脳波が出る一方、発作中以外にも棘波(spike)と呼ばれる尖った波、もしくは棘徐波(spike & wave)と呼ばれる尖った波と徐波の組み合わせの波が見られます。発作の既往がある患者さんに、こうしたてんかんに特有の波が見られたら「てんかん」の診断がつきます。

ただし、てんかんのある患者さんの全員でこうしたてんかん性の波が見つかるわけではありません。てんかん患者さんにおいて、30分の短い検査時間の中でてんかん性の異常が検出される割合は50%もしくはそれ以下とされています。

繰り返し検査したり、もしくは睡眠時の検査を行うことで、検出率は70~80%に上昇します

 

⑥ 脳死判定

 

わが国において、脳波は脳死判定に必須の項目の一つです。「わが国において」と前置きしたのは、国によっては脳波検査は不要だからです。

脳波検査で確認するのは、あくまで主に大脳皮質の機能です。脳死において重要なのは、脳幹の機能が根絶していることです。

ですから、本来的には必須ではないのです。 但し、「脳死」ですから、脳幹~大脳までも含めた全脳死である必要がありますので、脳波を行うことは無意味ではありません。

脳死判定では、脳波の感度(振幅)を通常の脳波検査の5倍に増幅して判定します。脳波記録中に混入するノイズ対策など、高度の技術が求められます。法的脳死判定では、6時間をおいて2回の判定が必要になります(6歳未満は24時間開けて2回)。

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