脳波検査の限界
空間分解能が低い
脳波検査の弱点の一つは、空間分解能が低いことです。上述のように、脳波は脳脊髄液の中で広がり、頭蓋骨により弱まりますので、狭い範囲で生じた脳波が広い範囲で記録されます。ですので、異常のある部位の局在性の判断において弱点があります。
また脳波検査では、大脳皮質で発生した電位の振幅が非常に低かったり、広がりが限局していたりすると記録することができません。つまり、脳波検査で見ている波形は、脳のある程度広い範囲で同期して生じた比較的大きな電位を見ているのです。
脳の深いところの活動を把握できない
脳波は脳の深いところに由来する電位の記録をすることができません。
側頭葉てんかんの原因となる海馬に限局して発生した大きな電位は、実は脳波では見ることができません。
側頭葉てんかんの患者さんの脳波で見ているのは、海馬を含む側頭葉の広い範囲に広がったてんかん性の脳波異常を記録しているのです。
脳波を読むには経験が必要
脳波の最大の弱点は、その判読(脳波を読むこと)が容易でないことです。その解釈も、エキスパートになるとかなり一致してきますが、脳波の専門家でなければ大分あいまいなものになってしまいます。つまり、脳波の判読をすることができるようになるためには、十分な知識と経験が必要なのです。心電図や、CTやMRIの判定をするよりもはるかに困難の伴う作業です。
医師に、「脳波に乱れがある」と言われたら、何の異常か確認すべきです。
わが国では、脳波のエキスパートの証は、臨床神経生理学会の認定医制度(脳波部門)になります。