顔面の歪み・麻痺
顔の表情に関わる顔面神経
顔面の筋肉は、顔面神経という神経により緊張が保たれ、筋肉の動きに関する脳からの指令が伝わるようになっています。顔面神経は左右1対ありますので、どちらかの顔面神経が障害を起こすと、顔面が左右非対称になります。
通常、左右の両側が同時に障害されることはありません。
中枢性の障害と末梢性の障害
顔面の運動麻痺を大きく二つに分けると、脳に原因がある中枢性のものと、脳から出た顔面神経に原因のある末梢神経性(末梢性)のものに分けられます。
この二つは、顔面の状態を見ることで概ね区別することができます。末梢性の障害の場合には顔面全体が麻痺するのに対して、中枢性の場合には額の部分の筋肉は麻痺しません。
中枢性の顔面麻痺
脳に原因があるケースは、脳梗塞や脳出血といった急性に発症する病気で見られやすいものです。この場合、顔面麻痺は比較的軽度のことが多く、しかも基本的には一過性の症状です。更に、多くの場合では手足の麻痺を伴っています。
末梢性の顔面麻痺
顔面神経麻痺の原因としてより多いのは末梢性の顔面神経麻痺です。
末梢性顔面神経麻痺の原因として最も多いのは、ベル麻痺と呼ばれるものです。これは特発性顔面神経麻痺とも呼ばれ、原因はまだ分かっていません。ウイルス感染や顔面神経の血流障害などの説がありますが、本当のところははっきりとわかっていません。むしろ、いろいろな検査でも明らかな原因がない場合にベル麻痺と呼ばれているといったほうがむしろ分かりやすいかもしれません。
片側の末梢性顔面神経麻痺が起こると、片目が閉じにくくなり、口角から口に含んだ水分やよだれが流れ出るようになります。通常、突然発症であり、「朝起きて鏡を見たら顔が歪んでいるのに気づきました」「今朝食事のとき、口から水がこぼれました」などという訴えで患者さんは来院されます。
ベル麻痺は、後述するラムゼイ・ハント症候群と比較すると症状が軽いことが多く、軽い患者さんでは3か月程度でほぼ元の状態に戻ります。逆に、1年経過しても戻らない症状はそれ以後にも回復は得難くなってきます。
ラムゼイ・ハント症候群
ラムゼイ・ハント症候群は、水痘・帯状疱疹ウイルス(水ぼうそうや帯状疱疹のウイルス)が原因と言われています。このウイルスが顔面神経に感染して発症するとされます。
顔面神経はベル麻痺よりも強い印象であり、また耳やその周囲の痛みやその近辺に水疱ができます。また、難聴・耳鳴りを伴うことがありますが、これは聴神経への感染が関与していると思われます。耳の周囲の水疱や痛みは顔面神経麻痺より遅れて出てくるのが普通ですので、初診の時点では区別が容易でないこともあります。
ベル麻痺とラムゼイハント症候群について、詳しくはコチラをご覧ください。