若年性認知症
若年性認知症とは
65歳未満で発症する認知症のことを、若年性認知症といいます。
平均発症年齢は推定で51.3歳とされていて、40代で発症することもあります。働き盛りの年齢で発症するため、本人だけでなく、家族の生活への影響が極めて大きいと言えます。
高齢者の認知症は男性よりも女性に多いのですが、若年性認知症は男性の方が多いとされます。認知症の原因としては、脳血管性とアルツハイマー病の2つが圧倒的に多いとされます。少数ながら前頭側頭型、レビー小体型、頭部外傷後遺症(事故などで脳に損傷を受けたために起こる)、アルコール性認知症(多量の飲酒に伴う脳の委縮)なども含まれます。
- 50歳代、40歳代の方に物忘れが出始め、仕事や生活に支障をきたすようになっても、まさか認知症であるとは思いあたりません。本人は「いつもと違う」、「どうも調子が悪い」と感じますが、がまんしたり、放置したりします。
- 職場の同僚や家族が変化に気づいても、年齢が若いため「怠けているのではないか」、「ストレスや疲労のためではないか」などと誤解され、病院への受診が先延ばしになりがちです。更には、本人に無理を強いたりするケースも少なくないようです。
- また、病院で診察を受けても、うつ病や統合失調症、更年期障害などと間違われ、診断までに時間がかかってしまうケースが多く見られます。場合によってはいくつかの医療機関を経てやっと診断されるケースもあります。
そのため、発症から診断がつくまでにかかる時間は、高齢者認知症と比較しても長くかかってしまいがちです。
若年性認知症の症状
若年性認知症の症状としては、高齢者の場合と基本的に同じで、もの忘れや、今までできたことができない、といったことが目立つようになります。
例えば、
- 仕事やプライベートにおける大事な予定を忘れてしまうことがあります。あとから指摘されても、予定を組んだことそのものを記銘していないので、思い出すことすらできません。
- パソコンが使えなくなったり、電話応対ができなくなったりします。
- 主婦であれば、買い物に出かけても何を買うのかわからなくなったり、同じものを2つ買ったりします。料理の手順を誤って味付けがうまくいかないことが増えます。
その他、行動や性格にもしばしば変化が見られます。
- 周囲への気遣いができなくなったり、礼儀やマナーをわきまえない行動をとるようになったりします。
- きれいにしていた人が身だしなみに気を遣わなくなったりもします。
- 几帳面だった人がいい加減な性格になったり、怒りっぽくなって暴言暴力に繋がったり、意欲がなくなってふさぎ込んだりすることもあります。
若年性認知症のうち約10%では、言語能力の低下を伴うとされています。言葉を用いたコミュニケーションに障害が出ます。
若年性認知症の治療
高齢者認知症と同様で、現在の医療で完治させることは不可能であり、治療の中心は進行を遅らせることです。
使われる薬も、若年性認知症に特有のものはありません。
リハビリや余暇活動は脳の活性化に有効であるとされています。
高齢者の場合とは異なる大きな問題は、若年性認知症では初期の段階で本人に病識があるという点です。患者さんは自分がおかしいことに気付き、或いは認知症であることを知り、大きな不安を抱くことが多いようです。そのため、カウンセリングやメンタルケアを併せて行う必要があります。
生活習慣を見直す事が予防に繋がることも
若年性認知症の中にも、生活習慣を見直すことで発症を抑えられるものもあります。
アルコール性認知症はその代表で、禁酒と必要な栄養素の摂取が最も重要です。
脳血管性認知症には、生活習慣病が大きくかかわっており、高血圧をはじめ、糖尿病や脂質代謝異常を適切に治療することである程度予防効果があります。
そのためにも、魚や野菜、肉類をバランスよく摂取し、炭水化物を控えめにすべきです。塩分や糖分の取り過ぎに注意しましょう。定期的に適度の運動を心掛けて、肥満にならないようにしましょう。煙草は極めて有害であり、飲酒は適量が肝要です。
若年性認知症の問題点
若年性認知症患者さんの多くは、本人や配偶者が働き盛りの現役世代であり、子どももまだ自立していない状況にあります。病気のために仕事に支障が出たり、失業して経済的に困難な状況に陥ることになります。配偶者も本人の介護に時間を取られて十分に働くことができなくなり、身体的にも精神的にもまた経済的にも大きな負担を強いられることになります。更に、若い時に発症するため、介護が必要な期間も必然的に長くなり、負担はさらに大きなものになってしまいます。