レビー小体型認知症
レビー小体型認知症とは
脳に「レビー小体」という異常な物質がたまることが原因で、脳の神経細胞が徐々に減少していく進行性の認知症です。
進行性の認知機能低下に加えて、幻視症状とパーキンソン症候群を主な特徴としています。
1976年に日本の小阪憲司先生らがこのような病気を報告し、その後にレビー小体病という概念を提唱しました。のちに欧米でも同様の症例の報告が相次ぐようになり、1995年にレビー小体型認知症という名称が付けられ、ようやく正式に認知されるようになりました。
アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症と並び三大認知症と呼ばれています。認知症の原因としてはアルツハイマー型に次いで2-3番目に多いとも言われ、一説には認知症の約20%近くを占めるという報告もありますが、正確な頻度はまだわかっていません。
アルツハイマー病は女性に多いのに対し、レビー小体型認知症は男性の方が多いと言われています。多くは孤発性であり遺伝性の要素は少ないようです。
レビー小体とは?
レビー小体とは、脳の神経細胞にできる「封入体」と呼ばれるものの一種です。レビー小体の主たる構成成分はαシヌクレインというたんぱく質です。
ドイツの神経学者フレデリック・レビーによって発見されました。パーキンソン病患者の脳幹にみられます。また、レビー小体型認知症の大脳皮質や扁桃核でも多数みられます。また、心臓などの末梢交感神経節や消化管などの内臓自律神経系にも認められたと報告されています。
レビー小体型認知症と認知症を伴うパーキンソニズムの間に本質的な違いは明らかでなく、また両者には幾つかの共通点が認められます。両者ともに心臓交感神経の脱落がみられます。また、両者とも病状が進行すると、同じような症状を呈するようになると報告されています。更に病理学的検査では、両者のレビー小体の分布と程度に差が認められるものの明確に区別することはできません。
症状は?
レビー小体型認知症の症状には、アルツハイマー型認知症と異なる側面が沢山あります。
レビー小体型認知症の初期には「もの忘れ(記憶障害)」が目立たない場合もあります。一方、記憶以外の認知機能障害として、注意障害、実行機能障害(段取りができない)、視空間認知障害(場所が分からない)が出やすい傾向があります。
また発症早期から認知機能障害のほかにも多様な臨床症状を呈すことが少なくありません。特に、幻視(存在しないものが見える)は代表的な症状の一つであり、パーキンソン病に似た症状が起こりえることも特徴の一つと言えます。その他、しばしば立ちくらみや失神、便秘などの自律神経症状を伴います。うつ症状、嗅覚障害などもみられます。
睡眠障害やレム睡眠期の行動異常(レム期睡眠行動異常)が発症初期から認められることもあります。
レビー小体型認知症を、正しく診断するのは容易でありません。レビー小体型認知症に伴いやすい症状の有無を把握することが、早期診断の重要な手掛かりになるのです。従って、診断にはご本人やご家族からの経過に関するより具体的な話の聴取が重要です。
認知機能障害(中心的症状)
診断には必須の症状ですが、認知機能障害の中でも記憶障害は初期には目立たないことも少なくありません。
初期には記憶障害以外に注意障害や実行機能障害(段取りの障害)、視空間認知障害(目は見ているのに空間認識が苦手)などが生じやすいものです。
記憶に関して、初期には記銘や保持に比べて想起の障害が目立つとされています。しかし進行するとアルツハイマー病と同様に記憶障害や見当識障害、健忘失語などが出現します。
中核的症状
レビー小体型認知症の中核的症状は、認知機能の動揺、幻視、パーキンソン症候群の3つです。こうした症状は、アルツハイマー型認知症の初期には通常認めることの少ない症状なので、特に初期におけるアルツハイマー病との鑑別診断において重要です。
認知機能の動揺(中核的症状)
認知機能障害は変動しやすく、頭がはっきりした調子の良い時と、ぼーっとしている時とがあります。数分から数時間程度の短期の日内変動や、また数週から数ヶ月におよぶ長期の変動が見られることもあります。認知機能の動揺は発症初期に目立つことが多く、病状が進行すると変動は目立たなくなります。
幻視(中核的症状)
レビー小体型認知症では、発症初期から幻視(実際には存在しないものが見えること)を伴うことが多く、特徴の一つと言われます。リアルでとても生々しい幻視が見えるようです。例えば、実際にはいないのに「部屋の隅に子供や動物がいる」などと訴えたりします。
なお、アルツハイマー病において幻視は周辺症状ととらえられていますが、レビー小体型認知症における幻視は中核症状の一つと考えられます。
パーキンソン症候群(中核的症状)
レビー小体はパーキンソン病での病態基盤をなす物質でもあります。「レビー小体型認知症」と「パーキンソン病」には共通の病態基盤が想定されており、ともに同じ「レビー小体病」の枠組みに含まれています。レビー小体型認知症には、パーキンソン病で見られるような「手足が震える」、「筋肉がこわばる」、「歩くのが遅い」などの症状も見られることがあります。
パーキンソン症候群は中核症状の一つであり、初期診断の時点で既に25~50%に認められる一方、最後まで殆どみられない方もいらっしゃいます。
パーキンソン症候群が初発症状の場合、パーキンソン病と同様に初期から安静時振戦(何もしていない時に手足が震える)が認められる典型的な経過をとることが多いですが、寡動(動作が遅くなる)や筋固縮(筋肉がこわばってスムーズに動かせない)が主体の症例もあります。進行すると姿勢反射障害(体のバランスを取るのが困難)や歩行障害(小股で歩く)が出現します。このため転倒の危険性が高く、寝たきりにもなりやすくなります。
その他の症状
レム睡眠行動障害(示唆症状)
レム睡眠は睡眠深度の5段階のうちの1つです。人が夢を見るのはこのレム睡眠の時です。
レビー小体型認知症の患者さんは、このレム睡眠の時に大声で叫んだり、ベッドから飛び出したり、暴れたりします。かなりの頻度でみられる示唆症状のひとつです。
健康な人はレム睡眠の間は骨格筋の緊張が抑えられているため、夢を見ながら行動を起こすことはありません。しかし、レム睡眠行動障害がみられる患者さんでは、筋緊張の抑制が障害されるため、夢を見るとその内容に伴う精神活動を行動として実行してしまうようです。ただし、本人にはこの間の記憶はありません。
向精神薬に対する過敏性(示唆症状)
向精神薬は幻覚や不穏な状態に効く薬で、統合失調症などにも用いられます。この薬には、パーキンソン症候群、嚥下障害、過鎮静、意識障害、悪性症候群など様々な副作用があります。
レビー小体型認知症の患者さんに対して向精神薬が必要になりますが、少量の向精神薬に対してもパーキンソン症候群が急激に出現、増悪するなど副作用が出やすく、過敏性があるとされています。このような過敏性を示すのは30~50%程度とされていますが、過敏性は診断の根拠ともなりえます。
自律神経症状(支持症状)
自律神経の障害が出ることも特徴のひとつです。自律神経が乱れて消化管の動きが悪くなり便秘になります。血圧の調節がうまくいかなくなり、立ち上がった時に血圧が下がって失神することもあります(起立性低血圧)。
転倒や失神を繰り返す(支持症状)
パーキンソン症候群に伴う姿勢障害、歩行障害、バランス保持困難、注意障害、視覚認知障害などが原因となり、転倒しやすくなります。
また、脳幹部や自律神経系の機能異常により失神しやすくなります。その他、失神の原因は迷走神経反射障害かもしれません。
幻視以外の幻覚、妄想(支持症状)
幻聴は幻視に比べて少ないようですが、あります。体感幻覚もたまにあるようです。
レビー小体型認知症でも、妄想(物盗られ妄想、被害妄想、嫉妬妄想)などは多いようです。
抑うつ(支持症状)
うつ状態はアルツハイマー型認知症よりも頻度が高く、診断される前の前駆段階からうつ状態が高率に認められます。また、経過中、過半数の症例にうつ状態が認められます。
通常型 と 純粋型
併存するアミロイド沈着や神経原線維変化の程度から純粋型と通常型に分られます。両者では、発症年齢や初発症状などが異なります。
通常型ではアルツハイマー病と同じような病理変化を伴います。アルツハイマー型認知症と同様で70歳前後の高齢者に多く、初発症状として最も多いのはもの忘れなどの記憶症状です。そして後に、幻視やパーキンソン症状といったレビー小体型認知症の特徴症状や病変が現れます。
ただ、約3割の人には最後までパーキンソン症状が現れず、レビー小体型認知症の診断がなされていないケースも少なからずあると思われます。
純粋型では、アルツハイマー病の病変はほとんどありません。若年者に多く、約8割の人において先行症状としてパーキンソン症状を認めます。そのため、パーキンソン病と診断されることが多くあります。
初めからレビー小体型認知症と診断されるケースやパーキンソン病から移行してくるケースがあります。
画像診断
頭部MRI
MRIでは、アルツハイマー型認知症と比較して海馬を含む側頭葉の内側の萎縮が軽度であること、萎縮の程度に関して脳の部位により偏りがないことが特徴とされています。
糖代謝PET(FDG-PET)と脳血流SPECT
レビー小体型認知症では、後頭葉、とりわけ一次視覚野の代謝低下や血流低下が特徴的な所見と言われています。脳血流SPECTでは後頭葉の血流低下、FDG-PETでは後頭葉の糖代謝の低下がみられます。脳血流SPECTも有用ですが、FDG-PETの感度の方が明らかに勝っています。
MIBGシンチグラフィー
meta-iodobenzyleguanidine (MIBG)は、アドレナリン性前シナプス後神経終末より取り込まれる性質のある物質で、交感神経のイメージングに用いられます。レビー小体病(レビー小体型認知症やパーキンソン病)の患者さんでは、早期から心筋へのMIBGという薬剤の取り込みが低下します。
MIBG-心筋シンチグラフイーは、他の変性疾患に伴いパーキンソン病と類似の症状(パーキンソン症候群)を呈する病気との鑑別診断に用いられます。
2012年に保険審査で適応認可が下りました。
DATイメージング
(ドパミントランスポーターシンチグラフィ、イオフルパンSPECT)
シナプス前ドパミントランスポーター(presynaptic dopamine transporter、DAT)を画像化する検査です。イオフルパン(123I)(商品名:ダットスキャン静注)を用います。
本検査を行うと、レビー小体病の患者さんでは線条体の取り込みの低下が認められるため、アルツハイマー病との鑑別に有用です。2014年からレビー小体型認知症診断のために保険適用が認められています。
レビー小体型認知症においてはMRI、MIBG心筋シンチグラフィ、ドパミントランスポーターシンチグラフィ、脳血流シンチグラフィ検査でそれぞれ特徴的な異常が認められますが、単一の検査で診断が難しい場合は複数の検査を組み合わせることで診断精度が増すことが期待されます。
経過は?
レビー小体型認知症の臨床経過や予後はアルツハイマー型認知症に比べて多様です。すべての特徴的な症状が最初から揃うわけではありません。初期にはパーキンソンの症状しかみられず、数年経過して認知機能の低下が次第に明らかになることもあります。典型的な症状が揃いにくいため、最初に出た症状を基にパーキンソン病やうつ病などと誤診されることも少なくありません。
典型的なレビー小体型認知症の臨床経過は初期、中期、後期に分けられます。レビー小体型認知症とアルツハイマー型認知症との間で、認知機能障害の進行に関する違いはあまりないようですが、レビー小体型認知症の方が進行までの期間がやや短いという報告もあります。
初期
うつ状態、便秘、嗅覚異常、レム睡眠行動障害が現れることが多いといわれています。特に高齢者でうつ状態が遷延する場合はレビー小体型認知症への移行を疑う必要があります。またせん妄もレビー小体型認知症を疑うエピソードです。前駆症状を早期に見出すことが早期診断では重要になります。
その後、必須症状である認知機能障害が出現します。注意障害や構成障害、視空間障害や実行機能障害(段取りの悪さ)が目立つことがあります。記憶障害(物忘れ)は軽度で、あまり目立たないかもしれません。
認知機能の動揺が目立つのはこの頃です。認知機能が保たれている時間が長く、見当識や理解力も保たれ、周囲の人と心を通じ合わせることにも問題ありません。
幻視(ありえないものが見える)などの訴えは増えてきます。被害妄想、嫉妬妄想を伴うこともあります。パーキンソン症状が出てくるかどうかは個人差がありますが、初発症状のこともあります。
中期
認知機能の動揺は初期に比べて目立たなくなり、認知機能の悪い時間帯が長くなってきます。また良好な時間帯でも記憶力や理解力が低下して、周囲の人とのコミュニケーションに障害が出てきます。
パーキンソン症状が強くなり、歩行が困難になってきます。
幻視、妄想が顕著となります。日常生活の介助が必要になってきます。
後期
認知機能の動揺は消失し、常に悪い状態となっていきます。日常生活で常に介助が必要になります。パーキンソン症状が進行して歩くことができなくなります。嚥下障害が生じ、食事を口から摂ることができなくなります。
そして最終的には寝たきりとなって肺炎を始めとする様々な合併症を併発してお亡くなりになります。
予後は?
レビー小体型認知症の平均罹病期間は3~7年程度で、アルツハイマー型認知症と比較すると短いものです。
治療方針は?
レビー小体型認知症では認知障害、幻視、妄想などの精神症状、遂行機能障害、パーキンソン症状などの運動障害、便秘や立ちくらみなどの自律神経障害、レム睡眠行動異常など、多彩な症状をきたしえるため、それぞれの患者さんの症状に応じた治療が必要です。治療には薬物療法と非薬物療法とがあります。
現在、レビー小体型認知症を完治させる薬はありませんが、症状改善効果が認められている薬はいくつか存在します。
認知機能障害への治療
残念ながら、レビー小体性認知症を完全に治す薬はまだ開発されていません。
認知機能障害については、アルツハイマー型認知症の治療薬である、コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン)やNMDA受容体拮抗薬(メマンチン)の有用性を示す報告があります。コリンエステラーゼ阻害薬には幻覚などの精神症状の改善効果も認められています。本邦ではレビー小体型認知症の認知機能障害に対して、ドネペジル(アリセプト)のみが保険適応を認められています。
なお、前述のようにレビー小体型認知症の患者さんは薬剤に対する過敏性が強いので、例えばドネペジルなどの薬に過剰に反応して副作用が出たり、逆に症状が悪化したりすることもあります。レビー小体型認知症に対して薬を用いる際には、分量に細心の注意が求められます。
パーキンソン症候群の治療
パーキンソン症状に対しては、パーキンソン病の治療薬(レボドパなど)を用います。ただしパーキンソン病と比較するとレボドパの効果は劣り、運動症状改善の期待は高くありません。また、精神症状(幻覚など)の悪化や不随意運動(ジスキネジアなど)が出現しやすくなるため、高用量の投与は避けるようにします。使用する場合、少量よりゆっくり漸増し、必要最低用量で調節します。
なお、ドパミンアゴニストの使用は精神症状の悪化をきたしやすいため、特に注意する必要があります。
精神症状に対する治療
レビー小体型認知症の患者さんは、向精神薬に対して過敏性を示す場合があるため、周辺症状に対しては非薬物的な治療を優先するのが望ましいと言えます。
認知症治療薬: レビー小体型認知症の認知機能障害に対する治療薬ドネペジル(アリセプト)は、周辺症状に対しても効果がみられる場合があります。ドネペジルは幻覚、妄想、無気力、うつに対して効果が期待されています。
その他のコリンエステラーゼ阻害薬やNMDA受容体拮抗薬にも、幻覚などの精神症状や異常行動に対して効果がある可能性がありますが、使用についてはまだ認可されていません。
漢方薬: 抑肝散という漢方薬には幻覚、妄想、うつ、不安症状に対する改善効果あると報告されています。
向精神薬: レビー小体型認知症の方では様々な精神症状が出現することがあるので、統合失調症に使用するのと同じ向精神薬が使われることがあります。向精神薬を使用する場合には、過敏性に対して十分に注意する必要があります。なかでは、クエチアピン(セロクエル)やアリピプラゾール(エビリファイ)はパーキンソン症状などの錐体外路系副作用が軽く比較的安全とされています。ただ、副作用による中止も少なくないため、投与する場合は必要最小限に留めます。
なお、クエチアピンは糖尿病では禁忌のため注意が必要です。
睡眠障害に対する治療
レム期睡眠行動異常症に対しては、抗てんかん薬のクロナゼパム(リボトリール、ランドセン)が使用されることがあります。ただし、レビー小体型認知症の患者さんでは、眠気が強くなりすぎたり、ボーっとして転びやすくなったりするので、特に注意が必要です。
クロナゼパムで問題があるようなら、抑肝散、ラメルテオン(ロゼレム)、ドネペジル(アリセプト)などで代用するのも一つの方法です。
便秘の治療
便秘は非常に多く見られる症状の一つです。便秘に対しては十分な食物線維と水分の摂取を行うことが重要です。薬物を用いる場合、酸化マグネシウム、ルビプロストン(アミティーザ)、センノシド(プルゼニド)、大建中湯、など、通常用いられるのと同様の緩下剤を使用します。
また消化管運動の改善を目的としてクエン酸モサプリド(ガスモチン)やドンペリドン(ナウゼリン)を使用することもあります。
排尿困難時
排尿困難があれば、前立腺肥大などに対して用いる薬(ウラピジル(エブランチル)やタムスロシン(ハルナール)、ナフトピジル(フリバス)など)を考慮することもあります。
レビー小体型認知症の排尿障害に対して抗コリン薬(バップフォー、ベシケアなど)を使用すると、認知機能が悪化することがあるためなるべく控えたほうがいいようです。
起立性低血圧
レビー小体型認知症ではしばしば起立性低血圧が生じます。起立性低血圧の治療についてはの多めの塩分摂取、就寝中の頭部挙上、弾性ストッキングの装着などの非薬物治療で対応します。
薬物としては交感神経に作用して血圧を上げる薬(ミドドリン(メトリジン)、ドロキシドパ(ドプス)、アメジニウム(リズミック))や、血液量を維持する薬(フルドロコルチゾン(フロリネフ))などの使用が報告されています。
非薬物療法
レビー小体型認知症の周辺症状に対して、非薬物的治療は生活機能を改善しうるものです。
レビー小体型認知症の周辺症状に対してはアルツハイマー型認知症と同様で、パーソン・センタード・ケアを基本とした適切なケアを行うことが勧められます。
パーキンソン症状が強いと、転倒するリスクが高まります。リハビリの一環として歩行訓練を行うことは有用です。
環境整備は重要です。転倒による怪我を防止するため、家の中をバリアフリーにします。また、レム睡眠障害で夜間暴れたりする場合、ベッドではなく床に布団を敷いて寝るようにしたり、ベッド周りにはクッションを置いて怪我を予防することも大切です。
レビー小体型認知症の臨床診断基準 (2005)
診断基準を載せておきます。
1. 中心的特徴(必須の症状)
進行性の認知症: 生活に支障をきたす程度のものである。ただし、初期には持続的で著明な記憶障害は認めなくてもよい。しばしば注意、遂行機能、視空間認知の障害が明白である。
2.中核的特徴
2つあればほぼ確実(probable)
1つあれば疑い(possible)
・認知の変動(注意や明晰さの著明な変化を伴う)
・幻視(典型的には、構築された具体的な繰り返される)
・特発性のパーキンソン症状
3.示唆的特徴
中核的特徴が1つ以上、示唆的特徴が1つ以上 ➡ ほぼ確実(probable)
中核的特徴なし、示唆的特徴が1つ以上 ➡ 疑い(possible)
・レム期睡眠行動異常症
・抗精神病薬に対する重篤な薬剤過敏性
・SPECTまたはPETにおける基底核におけるドパミントランスポーターの取り込み低下
4.支持的所見(通常みられるが、診断的特異性は証明されていない)
(症状)
・繰り返す転倒あるいは失神
・一過性の説明困難な意識喪失
・高度の自律神経機能障害(たとえば起立性低血圧、尿失禁)
・幻視以外の幻覚
・体系化された妄想
・うつ
(検査所見)
・CTやMRIで側頭葉内側部が比較的保たれる
・SPECTまたはPETによる後頭葉の活性低下を伴う全般性の取り込み低下
・MIBG心筋シンチグラフィでの取り込み低下
・脳波で側頭部の一過性棘波を伴う全般性徐波化
5.レビー小体型認知症の診断の可能性が低い所見
・局所的な神経徴候や脳画像でみられる脳血管障害の存在
・部分的にあるいは全体的に臨床像を説明しうる他の身体疾患または脳疾患の存在
・重篤な認知症の時期になって初めてパーキンソン症状が出現した場合
6.症状の時間的連続性
認知症 ➡ パーキンソン症状 の場合: 「レビー小体型認知症」
パーキンソン病 ➡ 認知症 の場合: 「認知症を伴うパーキンソニズム」
総称して、「Lewy小体病」と呼ぶ。