脳磁図
脳磁図とは
脳細胞の情報伝達は、細胞内や細胞間の非常に小さな電気の流れにより成り立っています。この微小な電流を数万倍~100万倍に増幅して見た波形が脳波です。
中学校で習った「右ねじの法則」をおぼえていらっしゃるでしょうか。電流が発生すると、その周りには磁界が発生します。脳にも僅かながら電流が発生しているということは、同時に脳からは磁界も発生しているということなのです。
脳が活動した時に発生する僅かな磁界を検出し、記録したものを「脳磁図」と呼びます。
脳磁図の原理
脳磁図を検出する医療機器は「脳磁計」と呼ばれる、とても高価な医療機器です。
脳磁図では、脳の電気的な活動によって生じるこの僅かな磁場を、超伝導量子干渉計 (SQUIDs) と呼ばれる非常に感度の高いデバイスを用いて計測します。
脳磁図で見ているものの起源は脳波と同一のもの(神経活動)になります。
1.電流は髄液により拡散し頭蓋骨により減衰する一方、磁場は距離により減衰することはあっても頭蓋骨の影響は受けません。
2.脳磁図検査では、通常の脳波検査よりも多数の電極を頭に装着するので、より高精度な測定が可能です。結果は、脳波と同じように線で表された波形として出てきます。
脳磁図検査では通常、検査終了後に電流源推定という操作が行われます。
多数の電極から得られた情報の源となる部位が脳のどこにあるのかを求める方法です。この操作を、「逆問題を解く」とも呼びます。記録した状況から原因を推定するための計算をするので、このように呼びます。
脳磁図の電流原推定方法として最も広く受け入れられているのが、等価電流双極子(equivalent current dipole;ECD)を計算する方法です。この方法では、求められた電流源は一つの点と向きで表現されます。ただ、実際の電流源はある程度の広がりを持っており、点で表現すること自体に無理があります。またその点は1点とは限らず、幾つの点で表現するかという課題があるうえ,脳の深い部位に電流源がある場合には精度が低くなると言われています。
そこで全国各地や世界のの脳磁図センターでは、脳磁図の電流源推定をより正確に行うため、様々な他の方法が試みられています。その中には、
・最小ノルム法
・傾斜磁場トポグラフィ(GMFT)
・synthetic Aperture Magnetometroy(SAM)
・sLORETA
などがあります。
脳磁図の臨床応用
脳磁図は、てんかんにおける発作焦点(発作の始るところ)の検索や、脳の感覚中枢、聴覚中枢、視覚中枢などの機能局在推定に用いることが出来ます。
脳磁図検査を受けられるのは、全国でも限られた施設のみです。脳磁図検査は、てんかんの術前検査として保険適応が認められています。その際にかかる医療費は51,000円で、患者さんの負担額は、3割負担だと15,300円、1割負担だと5,100円になります。