脳梗塞の前兆とは
- 2022年7月23日
脳梗塞に前兆はありますか?
脳梗塞は、脳や脳に行く血管が細くなったり詰まったりして、脳の血流が部分的に不足し、脳細胞が壊死する病気です。
脳血流が完全に足りない状態が生じると間もなく脳梗塞に至ります。
一方、血流が不十分で不安定な状態だったり、完全に足りない状態が一過性に短時間続いたりすると脳梗塞の手前の状態で症状が生じることがあります。
これを、「一過性脳虚血発作(transient ischemic attack;TIA)」と呼びます。
一過性脳虚血発作の症状とは?
一過性脳虚血発作の症状は、脳血流が低下した部位により異なります。血流が不足した領域に関わる脳の機能障害が一時的に生じると、その部位に応じた症状が出ます。
例えば、
2. 言葉の表出、理解の障害(構音障害、失語)
3. 意識の障害
4. 同じ側の顔、手、体、足の感覚が鈍い(半身の感覚障害)
5. 視野の半分が見えない(半盲)
6. ふらついて歩けない(失調)
7. ものがだぶって見える(複視)
8. 片方の眼が見えない
9. ものが覚えられない(記名力障害)
これらは、脳梗塞の症状と同じですが、とりわけ多いのは手足の脱力や一過性の視力に関する異常です。
一過性脳虚血発作では、上記のような脳梗塞の前駆症状が一過性に出現しますが、数分から数時間以内に症状がほぼ消失します。症状はやや軽め、もしくは重い症状があってもすぐに軽くなります。
これは、一部の脳の血流が不足してぎりぎりの状態にあるために起こります。血管に詰まりそうなところがあるとか、詰まってしまったけど他のところから血流が回ってきて補われている場合などがあります。
こうした症状は、脳梗塞になる一歩手前の状態ですが、この一部には既に小さな脳梗塞が既に発症してしまっている場合もあります。
一過性黒内障
TIAの症状として重要なもののひとつとして、「一過性黒内障」と呼ばれるものがります。これは、片目の視野が一瞬真っ暗になるものです。
目の動脈は脳の動脈(内頚動脈)から枝分かれしますので、この症状は内頚動脈狭窄の症状の可能性があり、重篤な脳梗塞の前触れかもしれません。
一過性の意識障害
一方、TIAと間違われやすい症状の一つに、一過性の意識消失発作があります。突然立ちくらみがして両目の前が真っ暗になり、そのまま意識が遠くなって気付いたら倒れていた、という場合です。
このような場合に意識の回復後の状態に問題がなく、手足の麻痺や失語などといった神経症状を伴っていなければ、元となっている原因が脳や脳血管である可能性は低いと言えます。
むしろ、血圧の問題や自律神経系の異常、不整脈などを疑ってみる必要があるといえます。
一過性脳虚血発作を放置しない
一過性脳虚血発作を放置していると、15~20%の方が 3か月以内に 脳梗塞を発症するとされています。しかもそのうちの半数は、最初の一過性脳虚血発作を起こしてから数日以内に脳梗塞になることがわかっています。 とりわけ、最初の48時間が重要です。
上述のような発作を経験したら、速やかに専門医による検査・治療を受けることで、脳梗塞を予防できる可能性があります。「怪しいな?」と感じたら速やかに専門医を受診しましょう。
脳梗塞の発症リスクを未然に評価するには
脳梗塞は、未然にそのリスクをある程度判断することは可能です。
脳梗塞を生じやすい方にはある程度の共通点があります。
・高血圧症 ・糖尿病(血糖値が高い)
・脂質代謝異常(コレステロールが高い)
・喫煙歴がある
・多量の飲酒歴がある
・不整脈(脈が乱れる;心房細動)
上記の中で思い当たることが複数ある場合には要注意です。食生活・運動習慣の改善、内服治療を行い、適正化することにより、脳梗塞のリスクを低下できる可能性があります。
思い当たる項目が複数ある方が、手足のしびれや呂律不良などを感じる場合には特に注意してください。
検査は?
MRIや頚動脈エコー検査、心電図検査を行うと、その方の脳梗塞のリスクが高いか低いかはある程度判断できます。
脳梗塞になりやすい方のMRIでは、脳に白質病変や隠れ脳梗塞と呼ばれる血流不良な部位が目立ちます。また、MRA(MR血管撮影)では動脈硬化性の変化が強いことが少なくありません。
頚動脈エコー検査を行うと、動脈硬化が進んでいて、プラークと呼ばれるものが付着して頚動脈が狭くなっていることがあり、脳梗塞のリスクが高い可能性があります。
心電図の結果次第では、心房細動に伴う脳塞栓という重大な脳梗塞を治療により予防できる可能性があります。
脳梗塞予防のため、生活習慣の改善と生活習慣病の治療・予防に努めましょう。また、不安な方は専門医に相談してみてください。