一過性全健忘
一過性全健忘とは
一過性の記憶障害です。直近の記憶がなくなります。古い記憶は保たれています。
特徴は?
一時的に、記憶の全てが抜け落ちる状態です。急に始まり、自然と24時間以内にもとに戻ります(多くは8時間以内)。
50歳以上の中高年に多く見られます(40歳未満では稀です)。
発作中は同じことを繰り返し質問します。
自分の置かれている状況が分からなくなり、「私はどこにいるのか?私は何をしているのか?」と不安そうに質問します。
名前や知っている人の顔、古い記憶は保たれます。
周囲の人が状況を説明しても理解できず、同じ質問を繰り返します。
頭痛や吐き気などを伴うこともあります。
発症の直前の身体活動(庭仕事など)や感情的な変化(不安、ストレス)、寒冷刺激やプール、入浴などがきっかけとなることがあります。
発作は通常、1回のみです。
脳卒中のリスクの高い人、また片頭痛もちの方には多いようです。
診断は?
記憶障害以外に、麻痺や発話、言語理解などには問題はありません。
一過性全健忘と区別が重要な病気に、てんかん(一過性てんかん性健忘など)や脳卒中があります。
MRIでは、脳卒中や脳炎ではないことを確認します。なお、一部の患者では発症から1~3日経過して、側頭葉の海馬という記憶に関わる部位に小さな脳梗塞類似の病変を認めますが、後に消失します。
脳波は、てんかんと区別するために行います。一過性全健忘では、てんかん性の異常を認めません。
血液検査では、特に異常を認めません。
経過は?
通常、24時間以内に状態は回復し、その後は通常の状態に戻ります。しかし、発作中の記憶を取り戻すことはありません。再発することは稀とされてきましたが、近年では稀ではないという報告もあります。ただし、繰り返す場合にはてんかんとの区別が重要でしょう。