むずむず脚症候群
むずむず脚症候群とは
足のなかが「ムズムズする」「イライラする」「チクチク・ピリピリ痛む」「熱くなる」といった、なんとも言えない不快な症状が起こる病気です。
医学的には「レストレスレッグス症候群(RLS)」や「下肢静止不能(かしせいしふのう)症候群」とも呼ばれます。
特に夜になると症状が強くなるのが大きな特徴です。そのため、布団に入ってもなかなか寝付けなかったり、夜中に何度も目が覚めてしまったりして睡眠の質が悪くなり、毎日の生活に大きな支障が出てしまいます。
・どれくらいの人がなっているの?
日本人の約2%~4%(200万~400万人)がかかっているとされ、そのうち治療が必要なレベルの人は約70万人と言われています。アメリカの調査でも、成人の約8%が年に数回症状を感じ、約3%が「週に2回以上のつらい症状」に悩まされています。
・どんな人がなりやすい?
女性の方が男性より約2倍(1.5〜2倍)多く見られます。お年寄りに多いというデータもありますが(65歳以上の約10%)、20~30代の若い世代でも比較的多く、年齢に関係なく発症します。まれに小児(子ども)がなることもあり、授業に集中できなくなるなど学校生活に影響が出ることがあります。
・他の健康への影響は?(最新の研究より)
むずむず脚症候群を放置してひどい睡眠不足が続くと、うつ病になる確率が高くなったり、心臓の病気(心血管疾患)や脳卒中のリスクが上がったりすることが近年の研究でわかっています。
原因は?
脳の中で情報を伝える「ドーパミン」という物質の働きが、なんらかの理由でうまくいかなくなることが原因だと考えられています。大きく分けると、以下の2つのタイプがあります。
1. 特発性(原因がはっきりしないタイプ)
明確な原因は不明ですが、主に以下のことが関係していると考えられています。
・神経細胞の異常: 脳の「ドーパミン」の働きに異常が起きているという説が有力です。また、最近では痛みを抑える脳内物質(エンドルフィンなど)の不足も関係しているとわかってきました。
・鉄分不足: ドーパミンを作るためには「鉄」が必要です。体内の鉄分が不足したり、脳のなかで鉄をうまく使えなかったりすると、ドーパミンが減ってしまいます。
・遺伝: 家族や親戚に同じ病気の人がいるとかかりやすいという研究結果があり、関連する遺伝子(MEIS1やBTBD9など)もいくつか見つかっています。
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2. 二次性(他の病気や薬が原因のタイプ)
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別の病気や、飲んでいる薬、体の状態の変化がきっかけで発症するタイプです。
原因になりやすい状態・病気:
・妊娠中(特に妊娠後期は22%の人が症状を感じます)
・慢性腎不全(特に透析中)
・鉄欠乏性貧血
・糖尿病や特発性の末梢神経障害
・多発性硬化症、パーキンソン病、睡眠時無呼吸症候群、リウマチ など
むずむず脚症候群の病態ついては未だ解明されていませんが、主に以下の3つが考えられています。
① 神経細胞の異常
脳の情報伝達物質である”ドーパミン”の働きに何らかの支障が起こることが原因だという説が有力です。
② 鉄分不足
鉄は、脳の活動に必要な”ドーパミン”を作るのに使われています。鉄が不足するとドーパミンの量が減少します。
③ 遺伝
むずむず脚症候群は、同じ家族や親族の中でかかりやすいとの研究結果があります。近年では、この病気に関連のある遺伝子がいくつか発見されています。
症状は?
ふくらはぎや太もも、足の裏など「下半身」を中心に、足の中がかゆいような感覚になるのが特徴です(腰や背中、腕に出ることもあります。両側に出ることが多いですが、片側だけの時もあります)。
患者さんは、この感覚を以下のように表現します(カッコ内は症状を感じる人の割合です)。
【患者さんが感じる不快感の例】
「落ち着かない(88%)」「不快(78%)」「神経質になる(63%)」「むずむずする・そわそわする(46%)」「痛い(21%)」
「痒い・むず痒い」「虫が這うような」「じっとしていられない」「火照る(ほてる)ような」「くすぐったい」「しびれるような」「冷たい」「熱い」
「ピンでなぞられているような」「針で刺すような」「水が流れるような「引っ張られるような」「焼けつくような」「引き裂くような」「電気が流れるような」
横たわった状態、もしくは座っている状態でじっとしているときに症状が出ます。そのため、「じっとしていられないような」、「足をさすったり、動かしたりしたい」、「歩き回らずにはいられない」ような衝動に駆られます。患者さんはこれを抑えるため常に脚を動かしたり身体をさすったりします。
多くの場合には両側に症状が現れますが、片側のみのこともあります。
足の表面というよりも深部に不快な感じがあります。
2.不快な感覚は、静かに横になったり座ったりしている状態で現れ、強くなる。
長時間座っていられなくなるため、仕事や学業に集中できなくなり、また映画館や電車、飛行機の中で座っている状態が耐えがたく感じる場合もあります。
3.症状は、歩いたり下肢を伸ばすなどの運動によって改善する。
足を叩いたり、さすったり、歩いたりすると、症状が軽くなったり、治まったりします。運動を止めるとしばらくして症状が再発します。
4.症状は、日中より夕方や夜に強くなる。
一般に、1日の中でも時間帯により症状の強さが変化します。夕方から夜になると症状が現れたり、強くなる傾向があります。なかなか寝付けなかったり、いったん眠っても脚の不快感で目が覚めてしまうことが多くなります。
悪化すると、日常の座ったままやじっとした姿勢でも症状があらわれるようになります。
治療は?
まずは「生活習慣の改善」から始めます。もし別の病気(基礎疾患)がある場合は、そちらの治療を優先します。
ステップ1:原因となっている病気や薬を見直す
の病気や薬が原因になっていないかチェックし、病気のコントロールを良くしたり、医師と相談して薬を調整したりします。
(1)原因となりうる病気
- 慢性腎不全
- 鉄欠乏性貧血
- 糖尿病
- リウマチ
- パーキンソン病
など
(2)症状を増悪しうる薬物
- 抗精神病薬
- 抗うつ薬(三環系抗うつ薬、SSRI、SNRI、リチウム、スルピリド、トラゾドンなど)
- 吐き気止め(メトクロプラミド、ドンペリドン、モサプリドなど)
- 胃潰瘍の薬(ラニチジン、ファモチジン)
- 血圧を下げる薬(マニジピン、ジルチアゼム、レセルピン、メチルドパ)
- 抗がん剤(イホスファミド、カルモフール、テガフール、カペシタビン、FU剤)
- アレルギーの薬(抗ヒスタミン薬:市販の風邪薬や鼻炎薬、一部の睡眠改善薬にも含まれます)
軽症の場合
軽症の場合は、生活習慣の見直しや工夫で症状が改善することもあります。
例えば、カフェインを含む食物の制限や、睡眠時間をずらすなどの工夫をしましょう。また、睡眠前に軽い運動やストレッチをすることも効果的です。
症状改善に結び付く可能性のある習慣として、以下のようなことが挙げられます。
(1)睡眠衛生を見直し、良い睡眠がとれるように環境を整えましょう。
- 規則的な就寝と起床の習慣を心がけましょう。
(2)症状を誘発しうる嗜好品の摂取を避けましょう。
- コーヒー・紅茶・緑茶などのカフェインを含んだ食物を摂るとは足の不快感が強くなるだけでなく、睡眠にも悪影響を及ぼします。
- とくに夕方以降は、これらを避けるようにしましょう。
- アルコールや過度の喫煙により症状が悪化することがあります。
(3)定期的な有酸素運動を取り入れましょう。
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定期的に、ウォーキングなどの軽い運動を行うよう、習慣づけましょう。
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就寝前にストレッチ、下半身や足裏のマッサージなどで筋肉をほぐすことも効果的です。
- 激しい運動により症状が悪化することがあるので、避けましょう。
(4)症状から気をそらすため、別のことに集中しましょう。
- ゲーム
- 会話
- 趣味等
- その他、集中・熱中できること
(5)足への適度な刺激により症状が改善することがあります。
- 全く動かないままだったり、逆に通常とは異なる過剰な運動を行ったりすると、症状が出やすくなります。
- 普段から適度な運動(ウォーキングなど)を心がけましょう。
- ストレッチやマッサージも有効です。
- 就寝前に短時間歩くのもよいでしょう。
- 入浴も有効です。温かいお風呂もしく冷た目のシャワーを浴びてみましょう(どちらがいいのかは、人それぞれです)。
(6)鉄分を補充し、バランスのよい食事を心がけましょう。
- 鉄不足は、症状を引き起こす原因のひとつです。医療機関で鉄不足を指摘された場合には鉄分の補充を心がけましょう。
- 鉄分豊富なレバーやホウレンソウ、あさり、いわし、大豆などを積極的に摂取し、バランスの良い食事を心がけましょう。
- また、サプリメントで鉄分を補給することも効果的です。
※ 自己判断で鉄剤を多く摂取すると、過剰になり副作用が出ることもあります。
中等度以上の症状の場合
中等度以上の方で、症状が強い場合には、薬を使って治療をします。
鉄欠乏のある場合
体内の鉄分・フェリチンを回復させる目的で、鉄剤を用います。
体内の鉄分が不足すると、神経伝達物質であるドーパミンが不足します。むずむず脚症候群が疑われる場合には、血液検査で貯蔵鉄・フェリチンの値を測ります。鉄分が不足している場合には、鉄剤の内服や点滴により症状が改善することがあります。
ドーパミン受容体作動薬
ドーパミンの働きをよくする薬です。
プラミペキソール(ビシフロール)、ロチゴチン(ニュープロパッチ)、ロビニロール(レキップ)などがあります。
ただし、この種の薬の開始後にむずむず脚症候群の症状がより早い時刻から現れるようになったり、手に広がったりすることがあります(「オーグメンテーション」と呼ばれます)。この場合は、薬の中止や変更が必要になります。
そのため、薬の開始あたって、最小量から開始し徐々に増量します。薬の量を、症状を許容できるために必要な最低用量に留めることが重要です。
その他の副作用として精神神経系症状(めまい、幻覚、妄想、興奮など)、 消化器症状(吐き気、便秘、食欲不振、口渇など)のほか、 頻度は稀ですが突発性の眠気などがあります。
※ ロビニロールは保険適応外です。
ガバペンチノイド
神経の過敏な働きを抑えるお薬(ガバペンチン、ガバペンチンエナカルビル、プレガバリンなど)です。現在、アメリカなどの最新のガイドラインでは、これが一番最初にお勧めされる薬(第一選択薬)となっています。約70%の人が大きく改善を実感し、睡眠の質も良くしてくれます。不快感、不快痛などの症状に有効です
主な副作用:めまい、眠気、吐き気、倦怠感、食欲増進など。
抗てんかん薬
抗てんかん薬のクロナゼパム(リボトリール、ランドセン;保険適応外)が有効なこともあります。クロナゼパムは、強い抗不安作用を持つため、睡眠障害を伴う場合に好んで使われます。しかし、耐薬性、依存性に陥りやすく、少量処方に留めておいた方がいいです。
主な副作用:眠気、ふらつきなど。車の運転には注意する必要があります。
低用量オピオイド(重症・難治性の場合)
いろいろな薬を試しても効かない、またはドーパミン薬で「増悪」が起きてしまったひどい症状の人には、痛みを抑える医療用麻薬(保険適応外)を、通常よりごく少ない量で使うことが最新のガイドラインで推奨されています。
※注意※
自己判断で睡眠薬や抗うつ薬を使うと、かえって症状を悪化させる可能性があるので、足に不快感があって眠れない時は、睡眠外来や神経内科などの専門医に必ず相談してください。正しく治療すれば、症状を抑え、心臓の病気などの将来のリスクを下げることにもつながります。
最終改訂日:2026年4月19日


