レム睡眠行動障害 | 福岡の脳神経外科 - はしぐち脳神経クリニック

レム睡眠行動障害

REM sleep behavior disorder

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レム睡眠行動障害

REM睡眠について

睡眠は、REM睡眠(レム)とnon-REM睡眠(ノンレム)に分けられます。

通常の睡眠サイクルでは、ノンレム睡眠とレム睡眠から成る約90~120分の睡眠周期が、一晩に4~5回繰り返されます。そのうち8割近くはノンレム睡眠で、2割がレム睡眠です。

ノンレム睡眠は深い眠りで、脳を休息させ、成長ホルモンを分泌し、生体機能を整える効果があります。一方、レム睡眠の間、脳は活動して、生活で得られた記憶や思考内容を整理しています。

REMとはrapid eye movement(“急速眼球運動”)の略です。レム睡眠は急速眼球運動を伴った睡眠のことです。全体の睡眠における割合は少ないですが、朝方に増えます。夢を見るのはこのレム睡眠の時です。

脳波検査では、レム睡眠時の脳波は覚醒時の脳波と似たような波形になっています。つまり、脳は夢を見つつ活動しています。しかし、正常であれば脳の活動が体に伝わらないようになっているため、レム睡眠時には筋緊張は低下しており、手足は動かないのが普通です。従って、通常、夢で見たことを行動に起こすことはありません。

 

レム睡眠行動障害では

レム睡眠行動障害の方では何らかの原因で筋緊張の抑制が働かず、夢で見たことをそのまま行動に移してしまいます(夢の行動化)。しかも、見る夢は不快な夢や暴力的な夢が多いといわれています。そのため、大声を上げたり、起き上がったりします。中には、ベッドや家具を蹴飛ばして怪我をしたり、周りの人に殴り掛かって怪我をさせることもあります。

夢の内容は鮮明であり、そういった時に目が覚めると、その夢の内容を覚えています

その他にも、寝ている間に歩いたり、物を食べたりするといった異常行動があります。

 

発症原因と背景要因

骨格筋の筋緊張と睡眠に関連のある、脳幹の”橋被蓋部”に障害があることが推定されています。

発症は50~60歳代に多く男性が圧倒的に多いとされます(80~90%)。

パーキンソン病やレビー小体型認知症の患者に合併することが少なくありません。また近年では、レム睡眠行動異常があると、将来にパーキンソン病やレビー小体型認知症を発症するリスクが高いことがわかっています。

 

治療は

非薬物療法

怪我を予防するため、寝床の周辺の環境を整備します

  • 背の高いベッドではなく床にマットレスを敷く。
  • 危険につながるような物品を寝室に置かない。
  • クッションを置く。
  • 家具の角などを防護する。
  • 症状が落ち着くまでベッドパートナーとは別々に寝る。

など

 

薬物療法

①激しい行動異常がみられる場合や、②睡眠が妨げられ、日中の眠気のため日常生活に支障がでる場合には、薬物治療を行います。

クロナゼパム(リボトリール、ランドセン)とメラトニンが有効であるとされています。

第一選択薬としてクロナゼパムが用いられることが多いです。ただし、日中の眠気やふらつき、認知機能の低下などの副作用があります。高齢者や睡眠時無呼吸症候群を併発している場合には慎重に判断する必要があります。

メラトニンは我が国では上市されていません。代わりに、メラトニン受容体作動薬(ロゼレム)が用いられることもあります。

その他、ドーパミンアゴニスト(プラミペキソール、ロチゴチン)、抗認知症薬(メマンチン、ドネペジル、リバスチグミン)、抗てんかん剤(カルバマゼピンなど)、抗精神病薬(クロザピン、クエチアピン)なども有効であったと報告されています 。