ローランドてんかん | 福岡の脳神経外科 - はしぐち脳神経クリニック

ローランドてんかん

Self-limited epilepsy with centrotemporal spikes (SeLECTS)

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ローランドてんかん

ローランドてんかんとは

 

主に夜間就寝中に片側口周囲、顔面のけいれんを生じる発作が生じるてんかんです。

脳波所見から、中心・側頭部に棘波を持つ良性小児てんかん(benign childhood epilepsy with centrotemporal spikes: BECT)と呼ばれていました。

その後、国際抗てんかん連盟の分類では、「良性(benign)」という言葉が誤解を招きやすいため使わないようになり、childhood epilepsy with centrotemporal spikes(CECTS)という名称に変更されました。

最近、さらに名称改正があり、今後は、中心側頭部棘波を示す自然終息性てんかん(Self-limited epilepsy with centrotemporal spikes [SeLECTS])という正式名称になります(2023年現在)。

経過が良好な年齢依存性てんかん(特定の年齢で起こりやすく、加齢とともに落ち着くてんかんの相称)の一つです。

 

患者の背景は?

 

小児のてんかんとしては最も多く、てんかん全体の約10%を、小児てんかんの20~25%を占めます。

発症年齢は2歳から12歳で、特に4-9歳で多く見られます。

男児が2/3を占めます。

 

脳の病変や知的障害は伴いません。

家族性に多く発症し、てんかんや熱性けいれんも13~20%に認めます。15q14染色体の異常と考えられます。

熱性けいれんの既往は30%程度と多く、片頭痛がみられる例もあります。

 

発作の特徴は?

 

発作は口の周囲、喉、頬、顔面などの片側にぴくつき(シルビウス発作)で、さらに上肢から下肢へと広がり、片側のけいれんを起こします。全身けいれんを伴うこともあります。

発作中は一見、朦朧状態で、発語障害、唾液の過剰分泌などを伴い、時にごぼごぼと音がするので発作に気づきます。

発作時間は1~2分ですが、長い場合もあります。

通常は、入眠してまもなく発作を起こします。その他、明け方、起床直前、昼寝や、頻度は少ないですが起床後、食事中など覚醒時にみられることもあります。

味覚異常、聴覚過敏、腹痛を伴うこともあります。

発作時には応答がないので、意識はないように見えますが、後で本人に尋ねると、「発作のことを覚えているが、喋れなかった」ということもあります。

幼児では全身けいれんが多く、学童期には部分発作のほか、全身けいれん起こります。

発作の回数は月~年単位と少なく、10~20%の方では1回のみです。2~3日連続することもあります。

 

診断は?

 

上記のような患者背景・症状の問診と、脳波やMRIで診断します。

 

脳波

脳波は、診断に大変有用です。

軽睡眠時に、ローランド発射という、高振幅の2相~3相性の鋭波で、後ろに低振幅の徐波を伴います。中心側頭部(C3、C4、T3、T4)に出現します。通常、片側にみられ、左右非同期に出現したり、交代性現象も見られます。通常、15歳にはてんかん性波は消失します。

 

 

MRI

臨床症状や脳波所見が典型的ではない場合にはMRIでてんかんと関連する病変がないか確認すべきといえます。

 

治療は?

1回のみの発作では必ずしも抗てんかん薬を開始しなくても構いませんが、家族の方の不安が強ければ抗てんかん薬を開始します。

発作の頻度が多い場合、全身のけいれんに進展する場合は薬による治療を行います

内服薬として、カルバマゼピン、バルプロ酸ナトリウム、レベチラセタムなどが処方されます。

通常は15歳ごろには発作が消失します。なお、脳波パターンに変化があるケース(睡眠中の持続性棘徐波パターンや全般性棘徐波など)や、他の発作型を伴うケースがあり、この場合には対応が異ってきます。

稀に、16歳以後に全身強直間代けいれんを起こすようになります。

発作は容易に消失しますが、てんかん性の波はなかなか消失しません。

脳波異常が続いていても、通常、発達には問題なく、2〜3年間発作がなければ抗てんかん薬中止も検討します。