てんかん患者さんを支える福祉制度
てんかん患者さんを支えるいくつかの福祉制度があります。今回は、成人のてんかん患者さんを主な対象疾患の一つとしている代表的な3つの福祉制度を紹介いたします。
こうした制度を受けるためには、ご自身もしくはご家族から該当の市町村窓口申請することが必要です。
自立支援医療制度
てんかん患者さんには様々な悩みがあります。
てんかん患者さんの多くは、その病気と長期に付き合っていかなければなりません。また、てんかん患者さんでは1種類ではなく、複数の抗てんかん薬を飲んでいることも多く、多い人では5種類以上になります。新しい抗てんかん薬の値段は上がる一方ですので、負担もばかにできません。また、てんかん患者さんが受けるデイケアなどのサービスにもお金がかかります。
医療費をサポートしてもらえる
こうしたてんかん治療にかかる医療費をサポートしてくれる制度が、自立支援医療制度です。現在の症状がどうであるかとは無関係に、再発予防のために通院治療が必要であれば、この制度を利用できます。
自立支援医療制度を使うと、医療費の一部を公費で負担してもらえます。
この制度を利用すると、該当する病気の治療に関して医療機関でかかった医療費のうち、入院以外の費用の自己負担が1割になります(通常の方は3割)。更に、所得に応じて1か月あたりの医療費に上限額が定められており、それを超えてを支払う必要はありません。
この制度は、申請時に登録した医療機関で利用できます。原則として登録する医療機関は1か所に限られます。
なお、てんかん以外の精神疾患でも利用できます。
対象となる医療機関は?
各都道府県より「指定自立支援医療機関」の指定を受けた医療機関、薬局、訪問介護ステーションが対象となります。申請の前に、ご自身が通われている医療機関が指定を受けているかを確認してください。
申請は?
自立支援医療制度の申請は、市区町村役所の福祉担当窓口で行います。申請には、医師の診断書、世帯の所得を証明するもの、健康保険証が必要になります。
精神障害者保健福祉手帳
この制度は、障害をもつ人の自立と社会参加をサポートするための制度です。
てんかんを含む精神科の病気があり、長期にわたり日常生活や社会生活に障害がある人が対象となります。
受けられるサービスは?
この制度を利用すると、
● 税制上の優遇(所得税、住民税、自動車税、相続税など)
● NHK受診料の減免
● 携帯電話の基本料金の割引
● 公共施設なの入場料等の割引
などが受けられるほか、自治体によって医療費助成、交通運賃や公共料金の割引などが受けられることがあります。
対象と等級
症状の程度によって、3等級に分けられていて、等級ごとに受けられるサービスが異なります。
2級 タイプAまたはBの発作が年に2回以上ある場合
タイプCまたはDの発作が月に1回以上ある場合
3級 タイプAまたはBの発作が年に2回未満の場合
タイプCまたはDの発作が月に1回未満の場合
タイプB 転倒する発作(意識障害の有無は問わない)
タイプC 意識を失い、行為が止まるが、倒れない発作
タイプD 意識障害はないが、自分が思ったような動きができなくなる発作
申請は?
初診日から6か月以上経過していたら申請することが出来ます。申請は、市町村の福祉担当窓口で行います。申請には、医師の診断書もしくは精神障害の障害年金証書の写しなどが必要です。
障害年金
障害年金は、障害がある人の生活費をサポートする制度です。
年金の種類には、障害基礎年金(国民年金)、障害厚生年金(厚生年金)、障害共済年金(共済年金)の3種類があります。
対象と等級
公的年金に加入し、一定期間以上に渡り保険料を納付している人が、初診日から1年6か月以上経過していれば申請することが可能です。原則として20歳以上65歳未満の方になります。
受給できる金額は、加入している年金の種類や障害の重さにより異なります。
障害の重症度は以下のように規定されています。
2級 十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが年に2回以上、もしくは、C又はDが月に1回以上あり、かつ、日常生活が著しい制限を受けるもの
3級 十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが年に2回未満、もしくは、C又はDが月に1回未満あり、かつ、労働が制限 を受けるもの
B:転倒する発作(意識障害の有無は問わない)
C:意識を失い、行為が止まるが、倒れない発作
D:意識障害はないが、自分が思ったような動きができなくなる発作
申請は?
障害年金の申請は、それぞれの年金の担当窓口になります。
申請に当たっては、年金手帳、年金請求書、医師の診断書、病歴・就労状況等申立書、受診状況等証明書、戸籍謄本、印鑑、年金に関する書類などが求められます。