むずむず脚症候群
むずむず脚症候群とは
足がムズムズ、イライラ、チクチク、ピリピリする、火照るといった、不快な症状が起こる病気です。
レストレスレッグス症候群、下肢静止不能症候群とも呼ばれます。
主に、夜に症状が強くなります。このため、寝付きづらくなったり、また途中で目が覚めて睡眠の質が悪くなったりして、生活に支障を来たすことがあります。
むずむず脚症候群の患者さんは人口の2%~4%程度と言われています(日本では200万~400万人)。このうち治療が必要なのは70万人程度と考えられています。女性でやや多く、男性の1.5倍といわれています。
高齢者で多いという報告もありますが、20~30代の若年者でも比較的多く、年齢により一定の傾向はありません。比較的稀なことですが、小児でもむずむず脚症候群になることがあります。学校の授業に集中できなくなり、日常生活に影響が出ることもあります。
原因は?
脳の神経伝達物質である”ドーパミン”の働きに何らかの支障が生じ、発症するようです。
むずむず脚症候群の原因は、背景となる要因の有無により2つに大別されます。
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特発性
- 原因が明らかではないもの
- ①ドパミン神経系の障害、②鉄不足/体内での鉄代謝に異常がある、③遺伝的なものなどが考えられる。
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二次性
- 他の病気や薬が原因で起こるもの
- 慢性腎不全(特に透析中)、鉄欠乏性貧血、糖尿病、リウマチ、パーキンソン病、妊娠など
むずむず脚症候群の病態ついては未だ解明されていませんが、主に以下の3つが考えられています。
① 神経細胞の異常
脳の情報伝達物質である”ドーパミン”の働きに何らかの支障が起こることが原因だという説が有力です。
② 鉄分不足
鉄は、脳の活動に必要な”ドーパミン”を作るのに使われています。鉄が不足するとドーパミンの量が減少します。
③ 遺伝
むずむず脚症候群は、同じ家族や親族の中でかかりやすいとの研究結果があります。近年では、この病気に関連のある遺伝子がいくつか発見されています。
症状は?
特に下半身を中心に、特に足の中が”かゆい”感覚が特徴的です。
「むずむずする」、「痒い」、「むず痒い」、「虫が這うような」、「じっとしていられない」、「火照るような」、「くすぐったい」、「しびれるような」
「痛痒い」、「痛い」、「冷たい」、「熱い」
「ピンでなぞられているような」、「針で刺すような」、「水が流れるような」、「引っ張られるような」、「焼けつくような」、「引き裂くような」、「電気が流れるような」
横たわった状態、もしくは座っている状態でじっとしているときに症状が出ます。そのため、じっとしていられないような、足をさすったり、動かしたりしたい、歩き回らずにはいられないような衝動に駆られます。患者さんはこれを抑えるため常に脚を動かしたり身体をさすったりします。
多くの場合には両側に症状が現れますが、片側のみのこともあります。
足の表面というよりも深部に不快な感じがあります。
2.不快な感覚は、静かに横になったり座ったりしている状態で現れ、強くなる。
長時間座っていられなくなるため、仕事や学業に集中できなくなり、また映画館や電車、飛行機の中で座っている状態が耐えがたく感じる場合もあります。
3.症状は、歩いたり下肢を伸ばすなどの運動によって改善する。
足を叩いたり、さすったり、歩いたりすると、症状が軽くなったり、治まったりします。運動を止めるとしばらくして症状が再発します。
4.症状は、日中より夕方や夜に強くなる。
一般に、1日の中でも時間帯により症状の強さが変化します。夕方から夜になると症状が現れたり、強くなる傾向があります。なかなか寝付けなかったり、いったん眠っても脚の不快感で目が覚めてしまうことが多くなります。
悪化すると、日常の座ったままやじっとした姿勢でも症状があらわれるようになります。
治療は?
むずむず脚症候群に対して最初に行うべき療法は、ライフスタイルの改善です。基礎疾患がある場合にはその治療を行います。
原因疾患の検索と治療
原因となっている病気や薬剤といった要因がないかをチェックし、こうした病気のコントロール改善、薬の調整を行いましょう。
(1)原因となりうる病気
- 慢性腎不全
- 鉄欠乏性貧血
- 糖尿病
- リウマチ
- パーキンソン病
など
(2)症状を増悪しうる薬物
- 抗精神病薬
- 抗うつ薬(三環系抗うつ薬、SSRI、SNRI、リチウム、スルピリド、トラゾドンなど)
- 制吐薬(メトクロプラミド、ドンペリドン、モサプリドなど)
- 胃潰瘍治療薬(ラニチジン、ファモチジン)
- 降圧薬(カルシウム拮抗薬マニジピン、ジルチアゼム、レセルピン、メチルドパ)
- 抗がん剤(イホスファミド、カルモフール、テガフール、カペシタビン、FU剤)
- 抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬)
軽症の場合
軽症の場合は、生活習慣の見直しや工夫で症状が改善することもあります。
例えば、カフェインを含む食物の制限や、睡眠時間をずらすなどの工夫をしましょう。また、睡眠前に軽い運動やストレッチをすることも効果的です。
症状改善に結び付く可能性のある習慣として、以下のようなことが挙げられます。
(1)睡眠衛生を見直し、良い睡眠がとれるように環境を整えましょう。
- 規則的な就寝と起床の習慣を心がけましょう。
(2)症状を誘発しうる嗜好品の摂取を避けましょう。
- コーヒー・紅茶・緑茶などのカフェインを含んだ食物を摂るとは足の不快感が強くなるだけでなく、睡眠にも悪影響を及ぼします。
- とくに夕方以降は、これらを避けるようにしましょう。
- アルコールや過度の喫煙により症状が悪化することがあります。
(3)定期的な有酸素運動を取り入れましょう。
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定期的に、ウォーキングなどの軽い運動を行うよう、習慣づけましょう。
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就寝前にストレッチ、下半身や足裏のマッサージなどで筋肉をほぐすことも効果的です。
- 激しい運動により症状が悪化することがあるので、避けましょう。
(4)症状から気をそらすため、別のことに集中しましょう。
- ゲーム
- 会話
- 趣味等
- その他、集中・熱中できること
(5)足への適度な刺激により症状が改善することがあります。
- 全く動かないままだったり、逆に通常とは異なる過剰な運動を行ったりすると、症状が出やすくなります。
- 普段から適度な運動(ウォーキングなど)を心がけましょう。
- ストレッチやマッサージも有効です。
- 就寝前に短時間歩くのもよいでしょう。
- 入浴も有効です。温かいお風呂もしく冷た目のシャワーを浴びてみましょう(どちらがいいのかは、人それぞれです)。
(6)鉄分を補充し、バランスのよい食事を心がけましょう。
- 鉄不足は、症状を引き起こす原因のひとつです。医療機関で鉄不足を指摘された場合には鉄分の補充を心がけましょう。
- 鉄分豊富なレバーやホウレンソウ、あさり、いわし、大豆などを積極的に摂取し、バランスの良い食事を心がけましょう。
- また、サプリメントで鉄分を補給することも効果的です。
※ 自己判断で鉄剤を多く摂取すると、過剰になり副作用が出ることもあります。
中等度以上の症状の場合
中等度以上の方で、症状が強い場合には、薬を使って治療をします。
ドーパミン受容体作動薬
ドーパミンの働きをよくする薬です。治療の第1選択肢になります。
プラミペキソール(ビシフロール)、ロチゴチン(ニュープロパッチ)、ロビニロール(レキップ)などがあります。
ただし、この種の薬の開始後にむずむず脚症候群の症状がより早い時刻から現れるようになったり、手に広がったりすることがあります(「オーグメンテーション」と呼ばれます)。この場合は、薬の中止や変更が必要になります。
そのため、薬の開始あたって、最小量から開始し徐々に増量します。薬の量を、症状を許容できるために必要な最低用量に留めることが重要です。
その他の副作用として精神神経系症状(めまい、幻覚、妄想、興奮など)、 消化器症状(吐き気、便秘、食欲不振、口渇など)のほか、 頻度は稀ですが突発性の眠気などがあります。
※ ロビニロールは保険適応外です。
抗てんかん薬
ドーパミン受容体作動薬で十分な効果が得られない場合には、抗てんかん薬と共通の成分を含むガバペンチンエナカルビル(レグナイト)が使われます。不快感、不快痛などの症状に有効です。
主な副作用:めまい、眠気、吐き気、倦怠感、食欲増進など。
その他、抗てんかん薬のクロナゼパム(リボトリール、ランドセン;保険適応外)が有効なこともあります。クロナゼパムは、強い抗不安作用を持つため、睡眠障害を伴う場合に好んで使われます。しかし、耐薬性、依存性に陥りやすく、少量処方に留めておいた方がいいです。
主な副作用:眠気、ふらつきなど。車の運転には注意する必要があります。
鉄欠乏のある場合
体内の鉄分・フェリチンを回復させる目的で、鉄剤を用います。
体内の鉄分が不足すると、神経伝達物質であるドーパミンが不足します。むずむず脚症候群が疑われる場合には、血液検査で貯蔵鉄・フェリチンの値を測ります。鉄分が不足している場合には、鉄剤の内服により症状が改善することがあります。
症状を悪化させる薬
睡眠薬や抗うつ薬を使うと、症状が悪化する可能性があります。