もしもの時のために。てんかんレスキュー薬「スピジア点鼻液」完全ガイド | 福岡の脳神経外科 - はしぐち脳神経クリニック

もしもの時のために。てんかんレスキュー薬「スピジア点鼻液」完全ガイド

Just in Case: The Complete Guide to Supizia Nasal Solution, an Epilepsy Rescue Medication.

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もしもの時のために。てんかんレスキュー薬「スピジア点鼻液」完全ガイド

  • 2026年1月18日

てんかんをもつ患者さんやご家族にとって、最も大きな不安は「発作が止まらなかったらどうしよう」ということではないでしょうか。

通常、てんかん発作の多くは数分以内に自然に治まります。しかし、中には発作が長く続いたり、意識が戻らないうちに次の発作が起きたりする**「てんかん重積状態」**に陥ることがあります。

スピジア点鼻液は、この「重積状態」や「重積へ移行するおそれのある発作」を食い止めるために開発された、日本で初めての経鼻投与型レスキュー薬です。


1. スピジア点鼻液とは?(効能とメカニズム)

スピジアは、脳の過剰な興奮を抑える「ジアゼパム」という成分を、鼻の粘膜から素早く吸収させる薬です。

  • 脳の「ブレーキ役」を強める:私たちの脳には、興奮を抑える「GABA(ギャバ)」という物質があります。スピジアはこのGABAの作用を強めることで、激しく動いている脳のスイッチをオフにし、発作を鎮めます。
  • 重症化を防ぐ:最大の目的は、「いつもより長く続く発作」や「繰り返し起こる発作」が、命に関わるような重い状態(てんかん重積状態)に進行するのを防ぐことにあります。

日本初の画期的な形:

これまで、医療機関の外で大人の患者さんに介護者が使えるレスキュー薬は限られていました。スピジアは、「鼻にシュッとするだけ」で、場所を選ばず誰でも迅速に、プライバシーを守りながら投与できる画期的な治療の選択肢です。


2. 国内第3相試験の結果


3. 投与するタイミング

スピジアは毎日使う薬ではなく、医師と事前に決めた「重積状態のサイン」が出た時に使用します。

発作のタイプ 投与の目安
強いけいれん発作 5分以上 続いているとき
意識が戻らない発作 意識が戻る前に次の発作が始まったとき(繰り返し起こる発作)
ぼーっとする発作 動作が止まり反応がない状態が10〜15分以上続くとき
医師の指定 「いつもより長い」「このパターンは危険」と指示されたとき

【特に高齢者の方へ】

高齢者の場合、目に見えるけいれんがなくても意識障害が続く「非けいれん性てんかん重積状態」の判断が難しいことがあります。どのような状態になったら使うべきか、あらかじめ主治医と具体的に相談しておきましょう。

スピジア投与後、再度、発作が起きて2回目の投与が必要になった場合には、4時間以上間隔をあけて使用してください。


4. 年齢・体重別の使用量

投与量は年齢と体重に基づき、医師が厳密に決定します。

2-5歳 6-11歳 12歳- 1回の合計投与量

組み合わせ例

投与方法


体重(kg)

6~12 10~19 14~28 5 mg 5mg容器 × 1個 片鼻に全量
12~23 19~38 28~51 10 mg 10mg容器 × 1個 片鼻に全量
23~ 38~56 51~76 15 mg 7.5mg容器 × 2個 左右に1個ずつ
56~ 76~ 20 mg 10mg容器 × 2個 左右に1個ずつ

※ 6歳未満のお子様は、1回の投与量は15mgを超えてはいけない決まりがあります。


5. 正しい使い方の手順(3ステップ)

【重要】スピジアは1回使い切りです。空打ち(テスト噴霧)は絶対にしないでください。

  1. 準備: 容器を袋から出し、人差し指と中指で翼を挟み、親指で底を支えます(振らなくてOK)。

  2. 差し込む: ノズルの先端を片方の鼻の穴に差し込みます。

  3. 噴霧: 親指で底を**「カチッ」と音がするまで一気に**押し込みます。


6. 投与後のケアと救急搬送の判断

投与が終わったら、患者さんの状態を注意深く観察します。

  • 回復体位: 嘔吐による窒息を防ぐため、体を横向きにします。

  • 呼吸の観察: 薬には脳を休める強い作用があるため、呼吸が浅くなっていないか、顔色が青白くないか(チアノーゼ)を必ず確認してください。

すぐに救急車(119番)を呼ぶべき状況

  • 投与しても5分以内に発作が止まらない。

  • 呼吸が不安定、または顔色が悪い。

  • 1回目から4時間経たずに、次の発作が起きてしまった。

  • 「合計2回投与」しても発作が繰り返される。(3回目は使用せず、直ちに病院へ)


7. 保管と注意

  • 保管: 直射日光を避け、常温(冷蔵庫に入れない)で保管してください。

  • 使用後: 強い眠気やふらつきが出ます。意識がはっきりするまで静かに寝かせてあげてください。

まとめ

スピジア点鼻液は、患者さんの脳と安全を守るための「お守り」です。

  1. 「重積状態への移行を防ぐ」ための薬であることを理解する

  2. 正しい用量と、左右の鼻に分ける手順を確認しておく

  3. 投与後は呼吸をしっかり観察し、迷わず救急車を呼ぶ判断基準を持つ

この情報を周囲の方(ご家族、学校、介護施設など)と共有しておくことで、いざという時の安心につながります。

https://spydia.jp/patients/#movie

 

院長 橋口 公章(はしぐち きみあき)
記事監修
院長 橋口 公章(はしぐち きみあき)

福岡生まれ、福岡育ち。

九州大学医学部卒業。
医学博士。

 

脳神経外科専門医、日本脳卒中学会専門医、日本てんかん学会専門医、日本定位・機能神経外科学会機能的定位脳手術技術認定、迷走神経刺激療法資格認定、日本小児神経外科学会技術認定医。

人との繋がりを大切にし、福岡および周辺地域の患者様の脳神経外科治療に尽力している。

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