髄芽腫
髄芽腫とは
髄芽腫は、主に小児の小脳に発生する悪性腫瘍です。比較的少なく、しかも徐々に減少する傾向にあります。男児に多く、女児の1.6倍です。
症状は?
第四脳室の近傍に発生することが多いので、増大して第四脳室が閉塞し水頭症を伴うようになってから症状が出ることがしばしばあります。その場合、小児の水頭症の症状としての頭痛、不機嫌、嘔吐、意識障害などが出現します。また、小脳症状としての失調(歩行障害など)も比較的多くみられます。
画像所見は?
細胞密度が高いため、CTではしばしば病変が白っぽく見えます。また、時に石灰化もあり白く見えます。しばしば水頭症を伴って脳室が拡大します。
MRIでは、T1強調画像ではやや黒っぽく、T2強調画像では白っぽく見えることが多いようです。造影剤を使用すると、多くの症例(90%)で増強されて白っぽくなります。正常脳との境界は比較的明瞭なことが多いようです。
しばしば播種(腫瘍が他の部位に飛んでばらまかれる)を伴いますので、脳と脊髄の全体のMRIで病変の広がりを確認することは重要です。
画像所見からは、上衣腫やAT/RTという稀な腫瘍との鑑別が重要です。
単純CT
MRI T1強調画像
MRI T2強調画像
造影MRI 水平断
造影MRI 矢状断
分類
WHO Grade IVに相当し、悪性度の高い腫瘍です。以前は治療困難な腫瘍の一つとされていました。今でもそのことに変わりはないのですが、経過の良い群と悪い群があることがわかってきました。
② 高度結節性髄芽腫 medulloblastoma with extensive nodularity
③ 退形成性髄芽腫 anaplastic medulloblastoma
④ 大細胞髄芽腫 large cell medulloblastoma
②は比較的稀で、3歳未満に多いとされます。④も稀です。③と④は他の群よりも予後が厳しいものです。
ソーニックヘッジホッグ:予後中間レベル
group 3 グループ 3:予後不良
group 4 グループ 4:予後中間レベル
治療は?
治療の基本は、手術により可及的に全摘出を目指すことです。但し、脳幹と接していたり重要な血管を巻き込んでいたりしますので、全摘出することはそれほど容易ではありません。補助治療として、放射線療法と化学療法を追加します。
手術における摘出度は、長期的な予後と関係すると言われています。その他、3歳未満では予後が悪く、播種がある症例も予後が厳しいと言われています。
追加治療の方針については、標準リスク群と高リスク群に分けて考えることが一般的になっています。
残存腫瘍が1.5cm3以上の場合や播種がある場合には高リスクグループとして放射線治療と化学療法を同時に組み合わせて治療を行います
ただ、3歳未満では放射線治療は副作用が高いので、化学療法を先行させ、早期再発時に放射線治療を追加します。
その他の症例は標準リスクグループに分類され、放射線治療を先行し、後で化学療法を行います。
よく行われる化学療法として、ICE療法(イホスマイド、シスプラチン、エトポシド)や、パッカー医師による方法(シクロフォスファミド、シスプラチン、ビンクリスチン)があります。なお、ICE療法は、胚細胞腫瘍に対しても時に行われるものです。
予後は?
予後はかなり改善してきましたが、それでも5年生存率は50~70%とされています。また、上述のように組織型や分子診断の結果によっても大きく異なります。
その他、放射線治療の影響で知的な発達に支障が出ることが問題になっています。