神経膠腫(grade 2~4)-症状・診断- | 福岡の脳神経外科 - はしぐち脳神経クリニック

神経膠腫(grade 2~4)-症状・診断-

Glioma (symptoms & diagnosis)

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神経膠腫(grade 2~4)-症状・診断-

神経膠腫とは

神経膠腫は、脳や脊髄にできる「グリオーマ(glioma)」と呼ばれる腫瘍の総称です。

脳は、主に思考や感情、運動、感覚などを担う神経細胞(ニューロン)と、神経細胞の働きを支える神経膠細胞(グリア)などからできています。

神経膠腫は、こうしたグリア系の細胞に由来する腫瘍です。ただし、神経膠腫にはさまざまな種類があり、現在では、顕微鏡で見た細胞の形だけでなく、腫瘍が持っている遺伝子の特徴も調べて診断・分類することが重要になっています。

 

神経膠腫の分類について

悪性度による分類

神経膠腫は、腫瘍の種類や遺伝子の特徴などをもとに細かく分類され、それぞれにgrade(グレード)が付けられています。一般的にはgrade 1~4に分けられ、grade が高い方が悪性度が高く、grade 4は最も悪性度の高い腫瘍になります。

ただし、すべての神経膠腫が単純にgrade 1~4に分類されるわけではありません。現在は、腫瘍の顕微鏡での見た目だけでなく、遺伝子の特徴なども組み合わせて診断するようになっています。

grade 1の星細胞系の腫瘍には、毛様細胞性星細胞腫、上衣下巨細胞性星細胞腫、脊索腫様膠腫などがあります(これらは成人に多いgrade 2~4のびまん性神経膠腫とは性質が異なるため、ここでは詳しく説明しません)。

 

発生組織による分類

神経膠細胞には、星細胞(astroglia)、乏突起膠細胞(oligodendroglia)、その他のグリア細胞などがあります。

神経膠腫にはいくつもの種類がありますが、成人に多い代表的なびまん性神経膠腫は、現在では顕微鏡で見た細胞の形だけでなく、腫瘍が持っている遺伝子の特徴によって分類されます。

星細胞腫(Astrocytoma):IDH変異型
IDHという遺伝子に変異を持つ神経膠腫で、grade 2~4に分けられます。

乏突起膠腫(Oligodendroglioma):IDH変異型、1p/19q共欠失
IDH変異に加えて、1p/19qという染色体領域の特徴的な欠失を持つ神経膠腫で、grade 2~3に分けられます。

膠芽腫(Glioblastoma):IDH野生型
IDH変異を持たない神経膠腫のうち、特定の遺伝子異常などを伴う最も悪性度の高い腫瘍で、grade 4に分類されます。

 

その他、2021年の分類では、小児に多くみられる神経膠腫についても、成人の神経膠腫とは異なる特徴を持つことから、独立した分類が設けられています。

小児タイプのびまん性低悪性度グリオーマ
小児タイプのびまん性高悪性度グリオーマ

それぞれ複数の種類に分けられ、遺伝子の特徴などによって診断や治療方針、予後が異なります。

なお、現在のWHO分類では、これらの小児型グリオーマについてもさらに細かく分類されています。

 

乏突起膠腫については別項目でお話します。

 

遺伝子診断の進歩に従い、神経膠腫の分類は複雑化し、多様化しています。ここでは、従来の分類に従い、シンプルに説明しています。

頻度としては、grade 4が特に多く、原発性脳腫瘍の10%強を占めています。その他、grade 2とgrade 3は、それぞれ原発性脳腫瘍全体の3~4%程度を占めています。

 

分類と年齢

神経膠腫には成人に多いタイプと小児に多いタイプがあり、年齢によってみられやすい腫瘍の種類が異なります。

成人に多いIDH変異型のgrade 2~3の星細胞腫や乏突起膠腫は、比較的若い成人から中高年まで幅広くみられます。
一方、grade 4の神経膠芽腫(IDH野生型)は高齢者に多く、特に60歳以上で増加します。

なお、小児では成人とは異なるタイプの神経膠腫が多く、現在のWHO分類では「小児型グリオーマ」として別に分類されています。

症状は?

神経膠腫は、脳のいろいろなところに発生します。発生した脳の部位により、症状は異なります。半身の麻痺言語障害部分的な視野障害などが代表的な症状です。

その他、脳の中でも特定の機能が出にくい部位に発生した腫瘍の場合、その症状は頭痛けいれん発作(症候性てんかん)などになります。

Grade 2のものはゆっくり増大するため、頭蓋内圧亢進による頭痛は少なく、けいれんが多い傾向です。一方、grade 4のものは急速増大するため、頭蓋内圧が高まり、頻繁に頭痛を認めます。腫瘍が更に増大すると、意識障害に至り、死亡してしまいます。

 

神経膠腫は、脳のいろいろなところに発生します。発生した脳の部位により、症状は異なります。半身の麻痺や言語障害、部分的な視野障害などが代表的な症状です。

その他、腫瘍が発生した場所によっては、記憶力や注意力の低下、性格や行動の変化、ふらつきなどがみられることもあります。また、脳のどの部位に発生した場合でも、頭痛やけいれん発作(症候性てんかん)などがみられることがあります。

Grade 2のものはゆっくり増大するため、頭蓋内圧が上昇することによる頭痛は比較的少なく、けいれん発作が最初の症状となることが多い傾向があります。 一方、grade 4のものは増大が速いため、腫瘍そのものによる症状や脳のむくみ(脳浮腫)による頭痛、吐き気・嘔吐、意識や認知機能の変化などが比較的短期間に進行することがあります。

ただし、症状だけからgrade 2やgrade 4などの悪性度を判断することはできません。腫瘍の種類や悪性度を判断するには、MRIなどの画像検査に加えて、最終的には病理診断や遺伝子・分子検査が重要になります。

 

診断は?

CTとMRI

診断には、脳のCTやMRIが有用です。

 

神経膠芽腫のMRI 造影画像とFLAIR画像

 

病院を受診した際に脳腫瘍が疑われると、造影剤を使用しない単純CTもしくは単純MRIを受けることになります。単純CTでは、脳の一部が不整な形で低吸収に(黒っぽく)映ります。単純MRIでも、それぞれの画像で正常の脳とは異なる色合いに見えます。

単純CTで脳腫瘍が疑われた場合、造影剤を使用したCTやMRIの追加検査を受けます。

 

 

 

造影剤が入っていかない場合:grade 2もしくは3の疑い

造影剤が入っていく場合:grade 4もしくは3の疑い

造影剤が入って白く映る大きな塊がある場合:grade 4(神経膠芽腫)の疑い

 

腫瘍は、造影剤で白くなった部位の内部に黒い部分を含んでいることが多いのですが、これは**腫瘍の増殖が速く、腫瘍内部の血流が追いつかなくなることで生じる壊死(組織が死んだ状態)**を表しています。

なお、造影剤を使用しないMRI(T2強調画像やFLAIR画像など)では、造影剤で白く映るところの周辺にも正常とは異なる部位が広がっています。この部位は、腫瘍細胞が正常脳の中に入り込んで(浸潤して)広がっている部分を含みます。ただし、腫瘍細胞の浸潤だけでなく、脳浮腫などが含まれる場合もあります。

その他、CTでは**腫瘍の石灰化や出血、骨の状態などを確認できるほか、**手術に必要な脳の血管の走行などに関する情報を得ます。MRIでは、血管系の情報に加え、脳機能に関わる情報の評価を行います。これには、functional MRI(機能的MRI)MR tractography(MRトラクトラフィー)などを用います。

なお、MRIの造影所見は神経膠腫の性質や悪性度を推測するうえで重要ですが、画像だけで最終診断をつけることはできません。最終的には、病理診断とIDHなどの遺伝子・分子検査を組み合わせて診断します。

 

PET検査

神経膠腫の疑いがある場合には、CTやMRIのほかにPET検査も受けることになるかもしれません。PETには、保険適応のある糖代謝PET(fluorodeoxy glucose (FDG))をもちいたFDG-PETと、保険適応外の疎水性アミノ酸を用いたmethionine(メチオニン)-PETとがあります。両者とも、神経膠腫に対して有用な検査ですが、メチオニンの方が感度は優れているようです。

 

他の病変との判別

Grade 2が疑われる場合

Grade 2の神経膠腫と区別すべき病気として重要なのは、別の脳実質内腫瘍のほか、脳梗塞や、限局性皮質形成異常変性疾患などです。

Grade 2の腫瘍で、腫瘍なのかそれ以外の病気なのか判断に迷う場合が時々あります。腫瘍の可能性が高ければ(腫瘍の存在部位にもよりますが)手術を受けることと思われます。一方、腫瘍以外の可能性が高いが、腫瘍である可能性も否定できない場合、診断を目的とした手術を行うのも選択肢ですし、まずは数か月後にMRIで再評価してもらい、増大傾向があれば手術を受ける方法もあります。

 

Grade 4が疑われる場合

Grade 4の神経膠芽腫と区別すべき病気として重要なのは、転移性脳腫瘍や悪性リンパ腫、脳膿瘍などです。神経膠芽腫のほか、悪性リンパ腫や脳膿瘍で、造影剤を使用した画像検査を行うと、腫瘍の中心部には造影剤が入らず(壊死)、その周りを取り囲むように造影剤が入っていくのが典型的な所見です(ring状増強と言います)。

転移性脳腫瘍の場合には、肺など他の臓器に癌がないかを調べることが重要です。原発癌の既往や全身の画像検査なども参考になりますが、血液中の腫瘍マーカーだけで神経膠芽腫と区別できるわけではありません。

悪性リンパ腫には、腫瘍マーカー(血液検査)も有用ですが、画像検査で造影剤が全体的に均一に入る感じがあり、神経膠芽腫とは異なります。

脳膿瘍とは、一瞬見間違うこともありますが、発熱を伴っている場合が多いですし、またMRIの拡散強調画像(diffusion-weighted image; DWI)という画像を撮ると一発で判ります。

このように、MRIやCTなどの画像検査は病変の性質を推測するうえで非常に重要ですが、画像だけで神経膠腫の種類や悪性度を確定することはできません。最終的には、手術などで採取した組織を顕微鏡で調べ、さらにIDHや1p/19qなどの分子検査を組み合わせて診断します。

 

病理組織診断(手術)

確定診断には、他の腫瘍と同様で、腫瘍の病理組織診断が必要です。
以前は、切除した腫瘍細胞の免疫染色を行い、顕微鏡による観察が診断の中心的な役割を果たしていましたが、現在では、顕微鏡で見た腫瘍の特徴に加えて、遺伝子などの分子情報を組み合わせて診断することが重要になっています。

とりわけ、IDH遺伝子の変異が診断において極めて重要だと認識されています。膠芽腫(従来のデノボタイプ)と星細胞腫(従来のセカンダリータイプ)とではIDH1という遺伝子に違いがあり、後者ではIDH1遺伝子の変異があります。

また、p53蛋白を介するシグナル系変異と、それに関連のあるATRX遺伝子の変異は星細胞腫の特徴とされています。対照的に、乏突起膠腫の診断には1p/19q染色体の共欠失が重要です。

分子マーカーによる診断次第で、治療方法や今後の経過の見込みが異なるため、現在の神経膠腫の診断には、こうした分子検査が非常に重要になっています

このように、現在は「病理組織診断」と「分子診断」を組み合わせて、腫瘍の種類や悪性度を総合的に判断します。この診断方法はどこの病院でもすべての検査を院内でできるわけではありません。こうした診断ができる病院で治療を受けるか、必要な検査を専門施設に依頼してもらえるかを確認するとよいでしょう。