脳腫瘍とは
脳腫瘍について
「腫瘍」と聞くと、多くの人は癌を思い浮かべるのではないでしょうか。 脳にも悪性腫瘍は発生しますが、脳と周辺の頭蓋内から発生する「脳腫瘍」のことを「癌」とは呼びません。その理由は発生学的な側面も含め、いろいろありますが、わかりやすい癌との違いとして、他の臓器に転移しないことが挙げられます。
脳腫瘍はとても種類が多く、治療方法や経過も非常にバリエーションに富んでいます。
原発性脳腫瘍と転移性脳腫瘍
脳腫瘍を大きく2つに分類すると、一つは頭蓋内から発生した腫瘍で、もう一つは頭蓋外から頭蓋内へ転移した腫瘍です。 後者のことを、転移性脳腫瘍と呼びます。これはつまり癌の転移ことです。脳には癌はできませんが、癌が肺やその他の臓器から転移してくることはあります。脳実質内腫瘍と頭蓋内脳実質外腫瘍
頭蓋内原発の脳腫瘍を大きく2種類に分類すると、それは脳そのものから発生するもの(脳実質内腫瘍)と、頭蓋内の、脳の外から発生するもの(脳実質外腫瘍)に分けられます。 前者の代表はグリオーマ(神経膠腫)と呼ばれる腫瘍です。 グリオーマの悪性度は世界保険機構(WHO)によりgrade 1~4の4段階に分類されています。
脳実質内腫瘍(髄内腫瘍)
脳実質内腫瘍の代表であるグリオーマのうち、Grade 1は悪性度が低く、長期的にも良性の経過を示すことが多いです。Grade 1の脳腫瘍に対する最もよい治療は可及的に摘出を行い、摘出度を高めることです。ただ、状況によっては手術を行わないで経過観察することもよいかもしれません。
Grade 2以上になると良性とは呼べなくなり、grade 4に至っては平均余名が1年半にも及びません。ただ、最近様々な抗腫瘍薬が出てきており、それによって余命が改善する可能性が出てきました。
Grade 2以上の脳腫瘍に対する治療の基本も、やはり最大限に摘出することです。それに加え、放射線治療や抗腫瘍薬による治療を行うこともしばしばあります。どの治療を行うかの判断の基本材料は、組織診断と腫瘍の遺伝子診断になります。 脳内から発生する腫瘍で、グリオーマの次に多いのは悪性リンパ腫です。これも、予後が良いとは言えません。
脳実質外腫瘍(髄外腫瘍)
脳実質外腫瘍の代表は髄膜腫です。 前述の神経膠腫と髄膜腫は、ともに脳腫瘍の25-30%程度を占めます。 その他、頭蓋内の腫瘍で他に多いものは、下垂体腺腫、神経鞘腫、頭蓋咽頭腫などです。他にも、様々な種類の稀な脳腫瘍があります。 これらの脳実質外腫瘍に対する基本的なアプローチは手術になります。 摘出率を最大にすることが最も再発しにくい状況に結びつきます。しかし、しばしば頭蓋底と呼ばれる脳の底部の、手術で容易に到達できないところにできますので、摘出は容易でありません。 腫瘍の組織型、そして摘出度次第ではガンマナイフという放射線治療を単独で用いたり、手術と併用したりすることがあります。