脳膿瘍 | 福岡の脳神経外科 - はしぐち脳神経クリニック

脳膿瘍

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脳膿瘍

脳膿瘍とは

脳の内部に細菌が入り込んで、細菌と膿(うみ)が塊を形成した状態です。

本来、脳は皮膚や頭蓋骨に覆われており、頭蓋骨の中には細菌はいません。本来無菌状態のはずの脳の中に細菌が入り込んで炎症が生じた状態が脳膿瘍です。

脳膿瘍の内部では細菌と免疫細胞が闘っています。そしてその細胞の死骸が膿を形成して脳の局所にたまります。

原因としては、蓄膿症や中耳炎、虫歯などの脳の近くにある感染源から波及したと思われるもの、心内膜炎や肺化膿症などが原因となって血流を介して感染したもの、頭部の外傷や手術後に生じたものなどがあります。原因不明のものも3-4割くらいあるとされています。

 

脳膿瘍の症状は

脳膿瘍の主な症状は、頭痛高熱吐き気痙攣意識障害です。

発熱

膿瘍は感染の一種ですから、生体反応として発熱が生じます。しばしば39℃を超えるような高熱になります。

頭痛

また、脳の局所で病変を形成すると、その周囲の脳に炎症が波及してむくんできます。脳がむくむと周りの脳が圧迫されて頭蓋内の圧は高まります。そうすると頭が痛くなります。頭の痛みはしばしば激しいものとなります。頭痛が激しいと、同時に吐き気も伴います。

けいれん

膿瘍は、周囲の脳を刺激してけいれんを起こしやすくなります。けいれんがひどくなり、繰り返し起こるようになるとてんかんになってしまいます。

意識障害

これまで述べたような症状が続き、激しくなると、意識が悪くなってしまします。眠りがちになり、目が開かなくなり、昏睡状態に至ってしまいます。放置していると生命の危険につながります。

その他、脳膿瘍のできた部位によっては片方の手足の麻痺言語障害などを伴います。

 

脳膿瘍の検査は

脳膿瘍は、上記のような発熱、頭痛、意識障害といった症状から疑います。ただ、脳膿瘍は比較的頻度の低い病気なので、いきなり脳膿瘍の可能性が濃厚だと言えるケースは比較的少ないと思われます。

ただ、そのような場合にも頭蓋内の病変を疑うことには間違いありませんので、その時点でCTやMRIといった画像検査を受けます。

 

MRIによる診断

脳膿瘍の診断に最も有用な検査はMRIです。特に、拡散強調画像と造影剤を使用した造影MRIが重要です。

造影剤を使用したMRIでは、膿瘍の壁が円形(リング状)に白くなる一方、内部は白くなりません(下図)。この壁は、細菌に対する人間の生体反応として生じた壁で、細菌を内部に閉じ込めておくためのものです。その内部には膿が溜まっています。

拡散強調画像では、膿が真っ白になります(下図)。造影剤を使用したMRIでリング状に白くなる病変は、脳膿瘍の他に悪性の脳腫瘍であるグリオーマ転移性脳腫瘍などでもみられるのですが、拡散強調画像では内部が白くなるようであれば脳膿瘍の可能性が極めて高いと言えます。

その他、周囲の浮腫んだ脳は造影剤を使用しないT1強調画像では黒っぽくなり、T2強調画像(下図)やFLAIR画像では逆に白っぽくなります。

但し、こうした典型的な所見が得られるかどうかは、発症後の時期や治療経過にもよります。

 

CTによる診断

診断には、CTも有用です。造影剤を使用しない単純CTでは、脳の内部のいびつな形をした黒っぽい部分として映ります(下図左)。もしかすると、脳膿瘍の壁がやや白っぽく映るかもしれません。一方、造影剤を使用すると、MRIと同じように膿瘍の壁がリング状に真っ白に映ります(下図右)。

 

 

 

ただ、CTだけで自信をもって脳膿瘍と断言できないケースもありますので、やはり診断能としてはMRIに劣ります。

 

髄液検査

腰椎穿刺による脳脊髄液の検査では脳ヘルニアが悪化する可能性があるなど、危険なため通常は行われませんが、検査を行うと、頭蓋内圧の上昇、白血球の増加、蛋白の増加などといった所見が得られます。髄液検査でも必ずしも細菌を同定できるかどうかはわかりません。

 

脳膿瘍の治療は

脳膿瘍の治療の柱は、抗生物質を中心とした内科的治療膿瘍の排除を目的とした外科治療です。

 

抗生物質による治療

膿瘍が大きくて脳を強く圧迫していたり、意識障害を伴っているようなケースを除いて、通常はまず抗生物質で治療を開始していいと思います。

抗生物質は、細菌の種類によって感受性が異なりますので、感染している細菌の種類に応じて使い分けなければなりません。ただし、感染している菌が何であるかは、菌の混じっている組織の培養検査をしなければわからず、つまり手術により組織を採取しなければわかりません。従って、手術をしていない場合は病歴や患者さんの背景などから感染源を想定して抗生物質を使い分けます。脳には抗生物質が届きにくいため、使用する抗生物質の量は通常使用する量よりもはるかに多くなります

抗生物質の選択が正しければ、徐々に発熱が引いてきて、頭痛その他の症状も軽くなっていきます。その他、CTやMRIで1週間ごとに経過を追っていくと、膿瘍自体がやや小さくなって周囲の浮腫も時間をかけて減っていきます。

 

その他の薬

脳膿瘍の患者さんでは抗生物質の他にも脳浮腫改善薬鎮痛薬吐き気止めなどを用います。副腎皮質ホルモン(ステロイド)を使うこともあります。ステロイドは脳の浮腫を強力に軽減してくれますが、免疫能を弱めることには注意しなければなりません。

 

手術

手術は、脳膿瘍がまあまあ大きく、症状が強い場合には積極的に行うこともしばしばあります。なかでも、抗生物質の使用にもかかわらず脳膿瘍が大きくなる、あるいは小さくならない場合には手術を避けられません。

手術の方法としては、膿瘍内にチューブを挿入して内部の膿を外に出す方法(ドレナージ手術)と、膿瘍を丸ごと摘出してしまう方法(摘出術)がありますが、ドレナージの方が一般的だと思われます。

ドレナージ手術

ドレナージ手術の場合、頭蓋骨に1円玉くらいの小さな穴をあけ、その穴から膿瘍の内部に向かってチューブを挿入することになります。

開頭手術

開頭手術の場合、ある程度の大きさの開頭が必要になります。開頭してから、脳の一部を切開して膿をチューブで吸引したのちに膿瘍を摘出します。膿瘍を摘出する際に、周囲の正常脳も一部取ることになります。

手術で得られた組織については培養検査を行いますが、培養検査では必ずしも最近を確認できるとは限りません。特に、しばらく抗生物質を使用した後に手術をした場合には、その検出率は低くなります。

 

経過・予後

脳膿瘍の治療には時間がかかります。適切な抗生物質を選択しても、症状が緩和されるまでには1週間以上かかりますし、抗生物質の使用は数週間に及びます。また、画像上の変化がはっきりとしてくるまでにも数週間を要します。

脳膿瘍は、正しく診断して適切な治療を受けることさえできれば、治癒が望めます。ただ、てんかんや高次脳機能障害などの後遺症が残ることもあります。

一度治ってしまうと、感染の原因が残っていない限り再発することはありません。

 

その他(水頭症・感染症など)