認知症・MCIのお薬について ― お薬には、それぞれ異なる役割があります ―
- 2026年9月6日
認知症の薬は、大きく「病気の進行を遅らせる薬」と「現在の症状を和らげる薬」の2つに分かれます。現在の医療では認知症を完全に治すことはできませんが、進行を緩やかにしたり、自立した生活を長く保つことを目指して治療を行います。原因や進行度、生活環境などを総合的に考え、一人ひとりに適した治療を選択します。
1.アルツハイマー病の進行を遅らせる薬
― 抗アミロイド抗体薬 ―
脳内に蓄積する異常なたんぱく質「アミロイドβ」を除去し、軽度認知障害(認知症の前段階)と、早期アルツハイマー病の進行を緩やかにすることを目的とした点滴薬です。
病気の進行を完全に止めたり、低下した認知機能を元に戻したりする薬ではありません。
対象:アルツハイマー病によるMCI(軽度認知障害)、または軽度認知症の方
| 薬剤名(一般名) | 投与方法 | 特徴 | 薬剤費の目安(4週間分の薬価) |
|---|---|---|---|
| レケンビ®(レカネマブ) | 2週間に1回 | 原則として継続して治療を行います。 | 約27.2万円(体重60kgの場合):3割負担で81,600円、1割負担で27,200円 |
| ケサンラ®(ドナネマブ) | 4週間に1回 | 検査でアミロイドβが十分に除去されたことが確認された場合、投与を終了します。 | 約26.8万円(1400mgの場合):3割負担で80,400円、1割負担で26,800円 |

【治療を受けるための条件と注意点】
- 事前に詳しい検査が必要です
すべての認知症に使えるわけではありません。
アミロイドPET検査や脳脊髄液検査などで、
アルツハイマー病に特徴的なアミロイドβの蓄積を確認したうえで治療を検討します。 - MRIによる安全確認が必要です(ARIA対策)
副作用として、脳のむくみや小さな出血など
(ARIA:アミロイド関連画像異常)が生じることがあります。
そのため、治療前や治療中にMRI検査を行います。
多くは症状を伴いませんが、頭痛、めまい、ふらつきなどがみられる場合があります。
抗凝固薬を使用している方などでは、特に慎重な判断が必要です。 - 医療費について
健康保険が適用されます。
薬剤費は高額ですが、「高額療養費制度」により、
実際の自己負担額には年齢や所得に応じた上限があります。
診察料、点滴、検査などの費用は別途必要です。
2.認知症の症状を和らげる薬
― 対症療法薬 ―
脳内の神経伝達物質などに作用し、
認知機能や日常生活の機能をできるだけ長く保つことを目的とした薬です。
認知症そのものを治したり、失われた脳細胞を元に戻したりする薬ではありません。

| 薬剤名(一般名) | 剤形・用法 | 特徴と主な対象 | 1割負担の目安(30日分) |
|---|---|---|---|
| アリセプト®(ドネペジル) | 内服・1日1回 | アルツハイマー型認知症では軽度~高度に使用。レビー小体型認知症にも使用されます。 | 約160円(5mg) |
| レミニール®(ガランタミン) | 内服・1日2回 | 主に軽度~中等度のアルツハイマー型認知症に使用します。 | 約370円(1日16mg) |
| メマリー®(メマンチン) | 内服・1日1回 | 主に中等度~高度のアルツハイマー型認知症に使用。他の認知症治療薬と併用することもあります。 | 約190円(10mg) 約340円(20mg) |
| アリドネ®パッチ(ドネペジル) | 貼付・1日1回 | 内服が難しい方などに使用できる貼り薬です。 | 約850円(27.5mg) |
| リバスタッチ®/イクセロン®パッチ(リバスチグミン) | 貼付・1日1回 | 皮膚から持続的に薬を吸収させる貼り薬です。2製品は同一成分です。 | 約400~500円(18mg) |
| リバルエン®LAパッチ(リバスチグミン) | 貼付・週2回 | 3~4日ごとの貼り替えで、毎日の貼付が不要です。 | 約280円(51.84mg) |


ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンなどのコリンエステラーゼ阻害薬では、吐き気、食欲低下、下痢などの消化器症状や、脈が遅くなるなどの副作用に注意が必要です。
メマンチンは比較的忍容性が良好とされています。
貼り薬では、貼付部位の赤みやかゆみなどがみられることがあります。
薬剤費について
上記は先発医薬品の薬価をもとにした、薬そのものの自己負担額の目安です。
実際の窓口負担には診察料、処方箋料、調剤料などが加わります。
自己負担割合が2割・3割の方では金額が異なります。
ジェネリック医薬品(後発医薬品)を選択できる薬では、
薬剤費が安くなる場合があります。
3.血管性認知症の場合
脳梗塞や脳出血、脳の細い血管の障害などが認知機能の低下に関係している認知症です。
血管性認知症では、
新たな脳血管障害を防ぐことが治療の重要な柱となります。
- 生活習慣病の管理
高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙などの危険因子を適切に管理します。 - プレタール®(一般名:シロスタゾール)
血小板の働きを抑えて血栓をできにくくする「抗血小板薬」です。
脳梗塞を起こしたことがある方などで、
脳梗塞の再発予防を目的として使用することがあります。血管性認知症そのものを治療する薬ではありません。
シロスタゾールによる認知機能低下の抑制を示唆する研究もありますが、
認知症に対する治療効果は確立していません。
一人ひとりに適した治療を選びます
「もの忘れ=すぐに認知症の薬」ではありません
甲状腺の病気、ビタミン不足、うつ状態、睡眠障害、服用している薬の影響など、
治療によって改善が期待できる原因が隠れていないかを確認することが大切です。
「お薬」と「生活習慣」の両方が大切です
適度な運動、十分な睡眠、バランスのよい食事、生活習慣病の管理、
人や社会との交流など、
生活全体を整えることも脳の健康を保つうえで重要です。
生活環境に合わせて治療を選びます
年齢や認知症の種類・進行度、検査結果、持病、服用中の薬、
飲み薬・貼り薬の使いやすさ、ご家族や介護者のサポート状況などを総合的に考えて、
治療方針を決定します。
※記載している薬剤費は2026年時点のおよその目安です。
薬価改定や使用量などによって変わることがあります。



