難治性てんかんに新たな選択肢「エキスコプリ」が承認―「発作ゼロ」を目指す、新しい抗てんかん薬への期待 ― | 福岡の脳神経外科 - はしぐち脳神経クリニック

難治性てんかんに新たな選択肢「エキスコプリ」が承認―「発作ゼロ」を目指す、新しい抗てんかん薬への期待 ―

Xcopri Approved in Japan as a New Option for Drug-Resistant Epilepsy

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難治性てんかんに新たな選択肢「エキスコプリ」が承認―「発作ゼロ」を目指す、新しい抗てんかん薬への期待 ―

  • 2026年9月27日

てんかんの治療に、新たな選択肢が加わります。

2026年9月16日、新しい作用特性を持つ抗てんかん薬「エキスコプリ®錠」(一般名:セノバメート)が、「てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)」を効能・効果として、国内で製造販売承認を取得しました(製造販売元:小野薬品工業株式会社)。

現在、てんかんには多くの治療薬があります。しかし、適切な抗てんかん薬を使用しても発作を十分に抑えられない「薬剤抵抗性てんかん(難治性てんかん)」の患者さんは、今なお少なくありません。

そうした中で登場したエキスコプリは、すでに欧米を含む世界45以上の国・地域で承認されており、特にこれまでの治療で発作が十分に抑えられなかった患者さんでも「発作ゼロ」を達成した例が比較的多く認められたことから、大きな注目を集めてきた治療薬です。

 

エキスコプリ(セノバメート)とは? どのような仕組みで効くのか

てんかん発作は、脳の神経細胞が一時的に過剰に興奮し、異常な電気活動が広がることで起こります。

エキスコプリの詳細な作用機序はまだ完全には解明されていませんが、神経細胞の過剰な興奮を抑える方向に、主に2つの作用を持つと考えられています。

1つ目は、神経の過剰な興奮を抑える作用です。神経細胞の興奮に関係する「電位依存性ナトリウムチャネル」に作用し、反復する神経発火を抑えます。

2つ目は、脳の「ブレーキ」を強める作用です。脳の興奮を抑える神経伝達物質GABAが働く「GABA-A受容体」を正に調節し、神経細胞が過剰に興奮しにくい状態へ導きます。添付資料でも、この2つが本剤の主要な薬理作用として示されています。

患者さん向けにたとえるなら、「神経のアクセルを緩めながら、同時にブレーキを効きやすくする」ような作用を持つ薬と考えると分かりやすいでしょう。

この2つの作用が臨床効果にどの程度寄与しているかは完全には分かっていませんが、従来とは異なる作用特性を持つことがエキスコプリの大きな特徴です。

 

なぜ「難治性てんかん」で期待されているのでしょうか?

てんかん治療の目標は、単に「発作の回数を少し減らす」ことだけではありません。

可能であれば、発作を完全になくす「発作ゼロ(発作消失)」を実現し、その状態を維持することが重要な治療目標です。

しかし現実には、複数の抗てんかん薬を適切に使用しても発作が残る患者さんがいます。薬剤抵抗性となった患者さんでは、さらに別の薬を追加して完全な発作消失を得ることは容易ではありません。

そのような中でセノバメートが注目された理由の一つが、臨床試験で示された高い発作抑制効果と、一定割合の患者さんで認められた発作消失です。

 

日本人を含むアジア第III相試験でも高い発作抑制効果

今回の国内承認の重要な根拠となった国際共同第III相試験では、既存の抗てんかん薬1~3剤を使用しても発作を十分にコントロールできていない、つまり治療が困難だといえる成人患者が対象となりました。

維持期における発作頻度の中央値は、治療開始前と比べて、

プラセボ群:約26%減
100mg群:約43%減
200mg群:約78%減
400mg群:100%減

となり、用量に応じて大きな発作減少効果が認められました。

さらに注目されたのが、維持期に発作が一度も起こらなかった「発作消失」の患者さんの割合です。

プラセボ群:2.6%
100mg群:12.4%
200mg群:30.1%
400mg群:52.4%

でした。つまり、この試験の6週間の維持期に限った評価ではありますが、400mg群では約半数の患者さんが発作を経験しませんでした。

さらに最近報告された同試験の長期継続試験でも、32週間の維持期における発作頻度の中央値はベースラインから83.6%減少し、25.5%の患者さんがこの期間を通じて発作消失を達成しています。短期間だけでなく、より長い期間でも発作抑制が維持される可能性を示す重要な結果です。

もちろん、臨床試験の数字がすべての患者さんにそのまま当てはまるわけではありません。それでも、これまで複数の薬を使用しても発作が続いていた患者さんに、もう一度「発作ゼロ」を目指せる可能性が加わったことは、大きな意味を持つと考えられます。

 

1日1回。「少量からゆっくり」が重要です

エキスコプリは1日1回服用する薬です。

ただし、最初から通常量を服用するのではありません。

12.5mgから開始し、原則として2週間以上の間隔をあけながら、25mg、50mg、100mg、150mg、200mgと段階的に増量します。通常の維持量は100~200mg/日で、患者さんの状態に応じて調整し、200mgを超える場合も2週間以上の間隔をあけて50mgずつ増量し、最高400mg/日まで使用できます。

この「少量から始めて、ゆっくり増やす」ことは、エキスコプリを安全に使用するうえで非常に重要です。

海外での開発初期には、DRESS(薬剤性過敏症症候群)と呼ばれる重篤な薬物過敏反応が報告されました。その後、12.5mgから開始し2週間ごとにゆっくり増量する方法を採用した大規模安全性試験では、1,339人の投与患者でDRESSは認められませんでした。ただし、リスクが完全になくなったことを意味するものではなく、発熱、発疹、リンパ節腫脹、肝機能障害などには十分な注意が必要です。

比較的多くみられる副作用としては、眠気、めまい、ふらつき、倦怠感などがあります。また、他の抗てんかん薬を含む併用薬の血中濃度に影響を与えることがあるため、専門医が現在の薬との組み合わせを確認しながら慎重に調整する必要があります。

 

「また薬が1つ増えた」だけではない可能性

てんかん領域では、この20年ほどの間にも多くの新しい抗てんかん薬が登場してきました。

そのため、「また似たような薬が一つ増えただけなのでは?」と思われるかもしれません。

しかしエキスコプリで特に注目したいのは、既存薬で発作が十分に抑えられていない患者さんを対象とした臨床試験で、発作回数の大幅な減少だけでなく、「発作消失」に到達した患者さんが一定数認められたことです。製造販売元も、てんかん治療の目標である発作消失につながる有効性を臨床試験で示した薬剤として位置づけています。

発作が続くことで、運転、就労、学業、外出、子育てなど、日常生活のさまざまな場面に制限を受けてきた患者さんは少なくありません。

もちろんエキスコプリだけですべての難治性てんかんが解決するわけではありません。薬剤抵抗性てんかんでは、てんかん外科など薬物療法以外の治療を検討すべき場合もあります。

それでも、これまで複数の薬を試しても発作が残っていた患者さんに、「さらに発作を減らす」、そして患者さんによっては「発作ゼロを目指す」ための新しい選択肢が日本でも加わったことには、大きな意義があります。

 

まとめ ― 難治性てんかん治療に新しい可能性

2026年9月に国内製造販売承認を取得した「エキスコプリ®錠(セノバメート)」は、従来の治療で十分な発作抑制が得られなかった部分発作の患者さんにとって、期待される新しい抗てんかん薬です。

特徴は、神経細胞の過剰な興奮を抑える作用と、GABAを介した抑制作用を高めるという2つの作用特性、そして難治例を含む臨床試験で示された高い発作減少効果と発作消失率です。

一方で、12.5mgという少量からゆっくり増量することが重要であり、副作用や他の抗てんかん薬との相互作用にも注意が必要です。

すべての患者さんで発作がなくなるわけではありません。それでも、長年さまざまな治療を続けても発作が残ってきた患者さんにとって、「発作とともに生活する」だけではなく、もう一度「発作ゼロ」を目指すための新たな治療選択肢となることが期待されます。

今後、薬価収載・発売を経て日本で実際の治療経験が蓄積されていくことで、エキスコプリがどのような患者さんに特に有効なのか、さらに明らかになっていくでしょう。

現在、複数の抗てんかん薬を服用しても発作が残っている方は、ご自身がこの治療の対象となり得るか、てんかん専門医や主治医に相談してみてください。


 

小野薬品工業「エキスコプリ®錠 国内製造販売承認」