ラクナ梗塞
ラクナ梗塞とは
(MRIの拡散強調画像による急性期脳梗塞 - 真っ白なところ)
ラクナ梗塞は、脳の深部に出来る比較的小さな脳梗塞です。
基底核や視床、脳幹などにできるもので、基本的には1.5cm以下の大きさのものです。脳の太い動脈から出たとても細い動脈(0.2~0.3mm程度で、穿通枝と呼びます)が閉塞して起こります。
ラクナ梗塞の最も重要な原因は持続する高血圧です。高血圧が持続すると、細動脈が動脈硬化を起こして血管壁の肥大、血栓、血管壊死などが生じます。なお、高血圧に次いで重要な原因は糖尿病です。
症状は?
小さな脳梗塞といっても、しばしば脳の深いところにある重要な部位の脳梗塞が生じますので、麻痺などの重篤な症状の原因にもなりえます。
一方、脳梗塞の出来た場所によっては、しばしば無症候性(症状がない)脳梗塞もあります。こうした無症候の脳梗塞は、俗に「かくれ脳梗塞」とも呼ばれています。脳ドックや何かのMRI検査の際に偶然発見され、それに関連する症状が現在も過去にも全くないものです。
脳梗塞の症状として、運動障害(片麻痺)、感覚障害(ジンジン感、しびれ)、構音障害(呂律が回らない)、眼球運動障害、嚥下障害、顔面麻痺などがあります。
治療と経過は?
発症直後からの治療は?
ラクナ梗塞に対して、発症から4.5時間以内では、t-PAという血栓を溶かす薬(血栓溶解剤)を使うことができます。これにより閉塞した血管が再開通する場合があります。うまくいけば、脳梗塞が最小限の範囲で済みます。4.5時間を過ぎると効果がないばかりか副作用の方が問題になりますので、できるだけ早く病院を受診することが大切です。
4.5時間以上経過してからの主な治療としては、血液の固まりができるのを抑える薬(抗血栓薬)や脳細胞を保護する薬(脳保護薬)などが使われます。抗血栓薬には点滴薬と飲み薬があります。点滴は最大で2週間になります。
ラクナ梗塞では、発症当日には症状が比較的軽かったのに、入院して点滴の治療を続けているのにも関わらず数日をかけて症状が進行していくことがあります。歩ける状態で来院したのに、3-4日後には手足が全く動かないということもしばしば経験します。ただ、ラクナ梗塞で昏睡状態になるようなことは通常ありませんし、ラクナ梗塞が直接の原因でお亡くなりになる患者はほとんどいません。
但し、小さいからといって馬鹿には出来ません。最も困るのは、内包や脳幹の重要な部分が障害を受けて反対側の片麻痺などの重篤な後遺症を残すことがあるからです。
リハビリが大切
ラクナ梗塞では通常意識障害を伴うことはありませんので、病状が落ち着いている限り可及的速やかにリハビリを行うことはとても大切です。
点滴治療継続中の早期からリハビリを開始します。点滴を行う期間が終わる頃には救急病院で行うべきことが概ね終了しますので、あとは回復期リハビリテーション病院へ転院してリハビリを集中的に受けるのが望ましいと思います。
再発予防のために出来ることは?
ラクナ梗塞の再発予防には、高血圧を初めとする生活習慣病の予防が最も重要です。抗血小板薬も用いますが、多剤併用では脳出血などの危険性が高まるので、複数ではなく一種類の薬にするのが望ましいようです。