脳動静脈奇形に対する治療方針 | 福岡の脳神経外科 - はしぐち脳神経クリニック

脳動静脈奇形に対する治療方針

Treatment policy for cerebral arteriovenous malformations

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脳動静脈奇形に対する治療方針

治療方針の決め方

脳動静脈奇形に対する治療選択肢としては、開頭手術による摘出定位放射線手術(ガンマナイフ)血管内治療のほかに、経過観察があります。積極的な治療を行う場合に、前3者のうちどの方法をとるかについては、しばしば議論の対象となります。時に、これらを組み合わせて治療します。脳動脈奇形に対する治療方針を決定するうえで特に重要な要素を下に列挙します。

 

・患者さんの年齢
・出血例か、てんかん発作例か、無症候性のものか
・大きさ
・脳内における病変の部位
・流入動脈や導出静脈の数や走行

 

こうした要素をもとに、治療したほうがいいのか、経過観察したほうがいいのか、そして治療を行うのであればどの方法を行うのかを決定します。

基本的な考え方として、出血例に対しては積極的な治療をお勧めします。

また、無症候の場合、50歳未満の患者さんについては積極的治療を選択肢とすべきです。50歳を超える方については、出血するケースも減少する傾向にありますし、余命や治療に伴うリスクも考慮したうえで、治療を受けるかどうかを総合的に判断しましょう。

高齢の方で、無症状ながら治療を受ける場合、ガンマナイフで治療可能なものであれば、有力な選択肢として検討すべきです。

てんかん発作を起こす症例で、殊に難治の患者さんは大きな動静脈奇形のケースに多いので、手術自体も容易でなく、なるべく薬でのコントロールを目指した方がいいでしょう。

 

血管内治療

血管内治療は現在目覚ましく発達している分野の一つですが、血管内治療単独で根治出来る動静脈奇形はまだまだ少ないのが現状です。血管内治療はしばしば、動静脈奇形に対する開頭手術を行う前に血流を少なくして手術を容易にする目的で行われます。

血管内治療では、流入動脈のなるべくナイダスに近い部位にまでカテーテルの先端を誘導して、先端から塞栓物質を流すことで、流入血管やナイダスそのものの閉塞を狙います。以前は、NBCA(エヌビーシーエー)という物質を用いられることが殆どでしたが、最近ではONYX(オニキス)と呼ばれる物質が用いられる機会が増えて、ナイダスの閉塞率が向上しました。

血管内治療の役割は

と言えども、血管内治療単独で動静脈奇形が消失するケースは多くありません。一方、血管内治療は開頭手術やガンマナイフの補助治療として重要な役割を果たしています。これについては、後述します。

危険性は

血管内治療に伴うリスクがいくつかあります。まず、正常脳組織に向かう動脈が閉塞することによる脳梗塞や、ナイダスを超えて静脈が閉塞してしまうことによる脳梗塞などがあります。また、多数の動脈を同時に閉塞すると、血流が急激に変化して、出血しやすくなる可能性があります。カテーテル操作そのものによる動静脈奇形やその近傍の血管からの脳出血の可能性もあります。その他、脳血管造影検査に伴う危険性として、穿刺部の血腫、カテーテルが通過する部位の血管損傷造影剤によるアレルギーなどがあります。

 

動静脈奇形摘出(開頭手術)

開頭手術による動静脈奇形の摘出は最も根本的な治療になります。但し、大きさや動静脈奇形の存在部位などによって、摘出の危険性は大幅に異なります。

脳の機能的に重要でない部位に存在する3cm未満の動静脈奇形に関しては、摘出は比較的容易です(容易と言っても、動静脈奇形の手術を行うにはそれ相応の手術経験が必要です)。

逆に、脳の深部にある動静脈奇形や、6cmを超える巨大な動静脈奇形は、脳神経外科の領域でも最も困難な手術といっても過言ではなく、どのようなエキスパートが行ってもそれなりの後遺症が残ってしまう可能性があります。

その他のものについては、大きさや脳の機能との関係次第で、手術の難易度は様々ですが、概して容易な手術ではありません。

リスク評価:Spetzler-Martin分類

動静脈奇形の手術を検討するときに、我々はSpetzler-Martin(スペッツラーマーチン)分類というものを用います。これは、手術の難易度を決定する分類です。分類の基となる要素は、大きさ(3㎝未満、3~6cm以下、6cm超)、脳機能との関係、深部の静脈の有無です。

もし、手術を検討しているのであれば、主治医の先生にグレードはいくつですかと尋ねると手術の難易度がわかるかもしれません。グレード1は、それほど難しくないと思います。グレード2は、容易な手術ではありませんが、慣れた術者が行えば何とかなります。グレード3は、ケースバイケースで、一概には言えません。グレード4と5は、かなり大変な手術になりますので、余程の理由がない限り手術を回避したほうが無難と言えます。

手術におけるポイント

私などは、脳動静脈奇形の手術において極力ナイダスを傷つけて出血をさせないように、綺麗な術野をこころがけますが、動静脈奇形の手術では、ある程度の出血は付き物です。ひとたび出血が起こると術野は血だらけになってしまいます。輸血が必要になる可能性も十分にあります。出血が止まらなくなって手術後にお亡くなりになってしまった患者さんの話も耳にしたことがあるものです。

専門的な話になりますが、動静脈奇形の摘出において重要なことは、

①まず流出動脈を確保して、これを確実に処理すること、

②そして導出静脈を温存しながらナイダスに切り込まないように心掛けつつ、ナイダスを周囲の血管から剥離すること、

③ 最後にナイダスが完全に剥離出来たのち、最後に最も重要な導出静脈を切断すること

です。この操作を誤ると、動静脈奇形に血液が溢れて出血のコントロールが出来なくなり、術野が血まみれになってしまいます。

もう一つ重要なことは、動静脈奇形を完全に摘出することです。動静脈奇形は脳の内部に入り込むようにして存在していて、摘出したつもりでも飛び地のようにして残っていることもあります。また、脳内に赤虫といってチリチリとした小さな異常血管が残ってしまうことがあります。異常血管を少しでも残すと、将来的に再発したり出血したりする危険が残ってしまいます。ですので、動静脈奇形の手術では亜全摘(大体摘出する)ということは許されません。もし、残存があるのであれば追加治療を検討せねばなりません。

ですから、脳動静脈奇形の摘出を行う場合には、術中の摘出後、施設の都合でやむを得ない場合には術後退院までのなるべく早い時期に全摘出できたことを確認するための血管造影検査を行わなければなりません。また、手術中にはインドシアニングリーン(ICG)という蛍光色素を血管内に流して、取り残しがないかを確認するのが普通です。

手術のリスク

手術における一般的な危険性として、主なものを挙げます。

動静脈奇形からの出血のほか、周囲の正常脳血管の損傷による術中・術後の脳内出血や脳梗塞などがあり、部位によっては麻痺、感覚障害、言語障害(失語、構音障害)、嚥下障害、視野障害、記憶障害、見当識障害、高次脳機能障害、意識障害などが生じえます(このあたりはケースバイケースです)。また、術後に急に血液の流出経路が変わったため、これまで虚血に陥ってい脳組織に血流が溢れて脳が急に腫れてきたり(急性脳腫脹)、それに伴い脳出血が生じたり症状を呈したりすることもあります。

その他、開頭手術に伴う一般的な合併症として、術後創部感染症、術後けいれん発作、深部静脈血栓症・肺塞栓症などがあります。また、全身麻酔に伴うものなどがあります。

さて、開頭手術における血管内治療の役割は、術前に流入動脈やナイダスをある程度閉塞させることにより、術中に出血しづらい状態にすることです。前述のように大抵の脳動静脈奇形は、血管内治療単独で消失するようなものではありません。それでも、術前に血管内治療を併用することにより、多少なりとも術中の出血量を減らして、手術を行いやすくします。特に、血管内治療により、手術中に到達しづらいような動静脈奇形の裏側、脳の深部から流入してくるような太い動脈を塞栓することで、術中操作が楽になります。なお、手術の補助としての血管内治療は、多い場合で術前に2-3回行われることがあります。

開頭手術は、下手な脳外科医が手術すると大変なことになりかねない手術です。また、たとえエキスパートでも巨大な脳動脈奇形に無理に手を出すと大変なことになりかねませんので、エキスパートだからと言って安心ではありません。手術適応が極めて重要と言えます。

 

下は、前頭葉動静脈奇形に対して血管内治療と開頭手術を組み合わせて治療した1例です。

AVM2 3DCT
造影3D-CT
AVM2 MR T2
MRI T2強調画像
AVM2 angio
術前脳血管造影検査
AVM2 angio post
術後、動静脈奇形は消失し、正常脳血管は温存された。

この患者さんは、無事に大きな後遺症なく歩いて自宅退院されました。

 

定位放射線治療(主にガンマナイフ)

ガンマナイフ治療は、3㎝以下の比較的小さな動静脈奇形に対して特に効果のある治療方法です。

脳内のどこにあってもある程度の効果を期待できるので、特に手術が難しい部位の動静脈奇形に対して有用です。最もよい治療対象は、脳の深部の病変だと考えます。また、脳の重要な機能のある部位の動静脈奇形でも検討したほうがいいでしょう。

ガンマナイフの弱点は?

ガンマナイフにはいくつかの問題点や弱点もあります。まずは上述の大きさの件です。大きなものほど動静脈奇形の消失率が低くなってしまいます

次は、出血例に対する治療の問題です。動静脈奇形に対するガンマナイフ治療が効果を発揮し始める時期については議論がありますが、2年から、長くて5年かかると思っていただいた方がいいと考えます。つまり、その間は出血の危険性が続いてしまいます

また、消失率は80-90%であり、5年たっても消失せずに、結果的に再出血した症例もいます。出血例については特に手術をお勧めします。

それから、放射線照射後数か月~数年以上たってから、正常脳細胞が壊死したり、脳が浮腫んでしまったり、嚢胞(液体の入った袋)を形成して脳を圧迫することに伴う症状を出すことがあります。

ガンマナイフの応用

3㎝を超えるような脳動脈瘤に対するガンマナイフ治療の効果は限定的ですが、大きな動静脈奇形に対する治療はそれ自体が困難を極めます。そこで、ガンマナイフの分割照射や、血管内治療を併用したガンマナイフ治療を試みることがあります。こうした治療の成功率はまだまだ低く、残存するケースも多くみられるのが現状です。残存すれば、出血のリスクは減らずに残ってしまいます。

 


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