静脈性血管腫
静脈性血管腫とは
静脈性血管腫は、脳の内部にある異常に太く発達した血管のことです。生まれつき(先天性)のものだといいう考え方が有力です。正常の脳の血流に関わっているのですが、稀ながら出血することがあります。2/3が大脳、1/3が小脳や脳幹近傍にあります。
画像検査では、0.5~0.7%の方に見つかり、屍体の剖検では2.6%で見つかったと報告されています。これは、脳血管奇形の中で最も高頻度と言えます。
英語では
Medullary venous malformation
Venous angioma
Venous malformation
Developmental venous anomaly
など、多数の呼び方があります。
しばしば、海綿状血管腫の周辺に存在しています。海綿状血管腫を摘出する際にもこの静脈性血管腫を残すように注意しなければなりません。そうしないと、静脈性の脳梗塞ができてしまう可能性があります。
症状は?
通常は無症状です。
頭痛などを契機にMRI検査を受け、偶然に発見されることがあります。
たまに、脳出血を起こして運ばれてくる患者さんがいます。未成年の方に多い印象があります。
静脈性血管腫そのものはてんかんの原因にはなりません。けいれんやてんかんを起こしたとすればそれは静脈性血管腫により生じた脳出血の影響、もしくは併存している海綿状血管腫によるものであろうと考えられます。もしくは、けいれんの原因は全く別のところにあるかもしれません。
検査と診断は?
海綿状血管奇形は、MRIもしくは造影CTで診断がつきます。
MRIでは、T2強調画像などで黒く抜けて見えることがあります(flow voidと呼びます)。周囲には局所性の脳萎縮があったり、脳の信号強度(色合い)が周囲の脳と異なって白くなったりすることもあります。造影剤を使用すると、静脈が明瞭に白く写ります。
静脈性血管腫は、脳の深部で多数の細い静脈(髄質静脈)が1か所で集結して太い静脈となり、脳表や深部の脳室に向かって出ていきます。これをメドゥーサの頭(caput Medusa)と呼んだり、燭台状(candelabra shape)と呼んだりします。
特に、脳出血しているケースにおいては、メドゥーサの頭の近傍に海綿状血管腫がないかどうかに注意する必要があります。造影剤を用いてCT検査を行っても同様の所見が得られます。なお、静脈性血管腫は造影CTで白く写ります。
脳出血後の患者さんにおいては、脳血管撮影検査(カテーテル検査)も行うことがあります。MRIやCTと同じような所見が得られますが、脳血管撮影が最も微小な血管の描出には優れていますので、脳出血後の患者さんで、その原因がCTやMRIでも明らかでない場合、脳血管造影まで行ってやっと静脈性血管腫の診断がつくことがあるかもしれません。
治療は?
治療方針としては、経過観察のみです。
もし、大きな出血を起こしてしまっているのであれば出血のみを取り除くための手術を行うことはありますが、その時でも静脈性血管腫は原則として温存します。
かつては手術が推奨されることもありました。しかし、静脈性血管腫を摘出すると正常の脳血流が障害を受け、静脈性の脳梗塞や脳浮腫を生じますので、静脈性血管腫そのものは温存します。