新しい片頭痛予防薬「ビエプチ」が承認されました
- 2026年9月19日
― 3か月に1回の点滴で片頭痛を予防する新しい選択肢 ―
片頭痛の予防治療に、新しい選択肢が加わります。
2026年9月16日、**「ビエプチ®点滴静注100mg」(一般名:エプチネズマブ)**が、「片頭痛発作の発症抑制」を目的とするお薬として厚生労働省から正式に承認されました。製造販売元はルンドベック・ジャパン株式会社です。
実際の発売は、薬価収載(国が薬の値段を決める手続き)を経て、2026年11月下旬ごろになる見込みです。
■ ビエプチとはどのような薬?
ビエプチは、**CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)**という物質の働きを抑える「抗CGRPモノクローナル抗体」です。
CGRPは片頭痛の発症に深く関係している物質で、片頭痛発作の際には三叉神経などから放出され、痛みの情報伝達などに関与します。
ビエプチは、このCGRPそのものに直接結合し、CGRPが受容体に作用するのを防ぐことで、片頭痛発作が起こるのを抑えます。
同じCGRPを標的とする注射薬として、日本ではすでにエムガルティ、アジョビ、アイモビーグなどが使用されています。
ビエプチの大きな違いは、皮下注射ではなく**「点滴静注」**で投与することです。日本で承認されたCGRPを標的とする片頭痛予防薬としては、初めての点滴製剤となります。
■ 海外ではすでに豊富な使用経験があります
日本では新しいお薬ですが、海外ではすでに使用実績があります。
米国では2020年に承認され、その後、欧州をはじめ世界各国で承認・使用されてきました。日本で初めて使われる全く新しい薬というわけではなく、海外ではすでに数年間の使用経験が蓄積されています。
もちろん、日本人を対象とした臨床試験も行われています。日本人を含む第III相試験「SUNRISE試験」や、日本人を対象とした長期継続試験「SUNSET試験」などにより、日本人における有効性や安全性についても検討されています。
■ 最大の特徴は「3か月に1回」
ビエプチの大きな特徴が、12週間(約3か月)に1回、点滴静注するという投与方法です。
海外では100mgを約30分かけて点滴する方法が標準的に用いられています。
つまり、片頭痛予防薬としての投与は年4回程度です。
「毎月注射を受けるのが負担」「自己注射は怖い・苦手」「毎月の注射を忘れてしまいそう」「できるだけ投与回数を減らしたい」といった方にとって、新しい選択肢となる可能性があります。
■ 効果の立ち上がりが速いことも注目ポイント
ビエプチのもう一つの特徴が、効果の立ち上がりの速さです。
皮下注射ではなく点滴によって直接血管内へ投与するため、投与終了時には薬剤の血中濃度が速やかに上昇します。
臨床試験では、投与翌日から片頭痛が起こる患者さんの割合が低下するなど、治療早期から効果がみられたことが報告されています。
「予防薬は効果が出るまで何週間も待たなければならない」という従来のイメージとは異なり、早期から予防効果が期待できることはビエプチの特徴の一つです。
ただし、効果の程度や現れる時期には個人差があり、すべての方に投与翌日から効果が現れるという意味ではありません。
■ 医療費の負担が少なくなるケースも?
ビエプチの薬価は、2026年9月現在まだ決定していません。そのため、現時点では具体的な自己負担額をお伝えすることはできません。
ただ、ビエプチには加入している健康保険や所得などによって、費用面でもメリットが生じる可能性があります。
ビエプチは3か月に1回の投与であるため、毎月投与する薬と比較すると、薬剤費が1か月にまとまることになります。
日本には、1か月の医療費の自己負担が一定の上限を超えた場合に、超過分の支給を受けられる**「高額療養費制度」**があります。自己負担の上限額は年齢や所得などによって異なります。
そのため、薬価や所得区分などによっては、3か月分の薬剤費が1回にまとまることで、高額療養費制度の対象となり、年間の実質的な自己負担が抑えられるケースも考えられます。
さらに、一部の健康保険組合には、国の高額療養費制度よりもさらに自己負担を軽減する独自の**「付加給付制度」**があります。厚生労働省も、健康保険組合によっては独自により低い自己負担上限を設けている場合があると案内しています。
したがって、同じビエプチを使用しても、加入している健康保険や所得などによって実際の負担額が大きく異なる可能性があります。
発売後に薬価が決まりましたら、当院でも実際の費用の目安について詳しくご案内する予定です。
■ 片頭痛治療は「痛くなってから」だけでなく「痛みを防ぐ」時代へ
片頭痛は、「頭痛が起きたら痛み止めを飲んで我慢する」だけの病気ではありません。
頭痛の回数が多い方や、仕事・家事・学業など日常生活への影響が大きい方では、**そもそも片頭痛発作を起こりにくくする「予防治療」**がとても重要です。
ビエプチは、
「3か月に1回の点滴」
「CGRPを直接ブロック」
「早期から効果が期待できる」
という特徴を持つ、新しい片頭痛予防薬です。
当院では、頭痛の頻度や強さだけではなく、日常生活への影響、これまでの治療歴、患者さんのライフスタイルなどを総合的に考え、一人ひとりに合った片頭痛予防治療をご提案しています。
ビエプチについても、2026年11月下旬ごろの発売後、スムーズに治療を開始できるよう準備を進めていく予定です。
「自分はビエプチの対象になる?」「今使っているCGRP製剤から変更できる?」「費用はいくらくらい?」など、気になることがありましたら、診察時にお気軽にご相談ください。


